赤いカブトムシ :: le scarabée rouge

江戸川乱歩 :: Edogawa Ranpo

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初出:「たのしい三年生」講談社

1958(昭和33)年4月~1959(昭和34)年3月

[destiné à des enfants de Troisième année du Primaire]

赤いカブトムシ

+目次

あるにちよう日のごご、丹下サト子ちゃんと、木村ミドリちゃんと、野崎サユリちゃんの三人が、友だちのところへあそびに行ったかえりに、世田谷区のさびしい町を、手をつないで歩いていました。三人とも、小学校三年生のなかよしです。

「あらっ。」

サト子ちゃんが、なにを見たのか、ぎょっとしたようにたちどまりました。

ミドリちゃんもサユリちゃんもびっくりして、サト子ちゃんの見つめている方をながめました。

すると、道のまん中に、みょうなことがおこっていたのです。むこうのマンホールのてつのふたが、じりり、じりりと、もち上がっているのです。だれか、マンホールの中にいるのでしょうか。

マンホールのふたは、すっかりひらいていました。そして、その下から、黒いマントをきた男の人が、ぬうっとあらわれたのです。その人は、つばのひろい、まっ黒なぼうしをかぶり、大きなめがねをかけ、口ひげがぴんと、両方にはね上がっていて、黒い三かくのあごひげをはやしていました。

せいようあくまみたいな、きみのわるい人です。その人は、マンホールからはい出して、じめんにすっくとたち上がると、三人の方を見て、にやりとわらいました。そして、黒いマントを、こうもりのようにひらひらさせながら、むこうの方へ歩いていくのです。

「あやしい人だわ。ねえ、みんなで、あの人のあとをつけてみましょうよ。」

ミドリちゃんが、小さい声でいいました。ミドリちゃんのにいさんの敏夫くんは、しょうねんたんていだんいんなので、ミドリちゃんもそういうたんていみたいなことがすきなのです。サト子ちゃんもサユリちゃんも、ミドリちゃんのいうことは、なんでもきくくせなので、そのまま三人で、黒マントの男のあとをつけていきました。

黒マントは、ひろいはらっぱをとおって、むこうの森の中へはいっていきます。世田谷区のはずれには、はたけもあれば、森もあるのです。ひるまですから、もりへはいるのも、おそろしくはありません。三人は、こわいもの見たさで、どこまでもあとをつけました。

森の中に、一けんのふるいせいようかんがたっていました。

「あらっ、あれはおばけやしきよ。」

「まあ、こわい。どうしましょう。」

そのせいようかんは、むかし、せいよう人がすんでいたのですが、いまはあきやになっていて、そのへんではおばけやしきとよばれています。

三人は、近くにすんでいるので、それをよく知っていました。

夜、せいようかんの二かいのまどから、赤い人だまが、すうっと出ていったのを見た人があるということでした。また、だれもいないせいようかんの中から、きみのわるい女のなき声がきこえてくるといううわさもありました。

三人のしょうじょがにげ出そうとしていますと、あっとおどろくようなことがおこりました。

黒マントの男が、せいようかんの外がわを、するするとのぼっていくではありませんか。はしごもないのに、まるでへびのようにのぼっていくと、二かいのまどの中にすがたをけしてしまいました。

三人はぞっとして、いきなりかけ出そうとしましたが、そのとき、せいようかんの方から、けたたましいさけび声がきこえてきました。

それをきくと、三人とも、思わず、うしろをふりむきました。二かいのまどから、白いかおがのぞいていました。そのかおが、きゃあっとさけんでいるのです。とおいので、はっきり、わかりませんが、三人とおなじくらいの年ごろの、おかっぱの女の子です。その子が、いまにもころされそうにさけんでいるのです。

「きっと、あの黒マントの男がいじめているんだわ。」

三人とも、おなじことを考えました。

まどの女の子は、なにものかの手からのがれようとして、もがいていましたが、とうとう、ずるずるとうしろへひっぱられて、まどからきえてしまいました。そのとき、なき声がぱったりとまったのは、男に口をおさえられたからかもしれません。

三人は、むがむちゅうでかけ出しました。そして、近くのめいめいのうちへかえったのですが、ミドリちゃんは、すぐにこのことをおとうさんと、にいさんの敏夫くんに知らせました。

「おしいことをしたなあ。ぼくがそこにいれば、きっと手がかりをつかんだのに。」

しょうねんたんていだんいんの敏夫くんが、ざんねんそうにいいました。

ミドリちゃんのおとうさんが、けいさつにでんわをかけたので、けいかんたちが森の中のせいようかんにかけつけて、中をしらべましたが、まったくのあきやで、人のかげさえ見えないのでした。せいようあくまのような黒マントの男は、いったいなにものでしょうか。そして、あのかわいそうな女の子は、どうなったのでしょうか。

Un dimanche après-midi, Satoko Tange, Midori Kimura et Sayuri Nozaki, trois amies, rentraient d’une visite chez une camarade et marchaient main dans la main dans une rue déserte du quartier de Setagaya. Toutes trois étaient en troisième année de l’école primaire et très proches.

«Oh !»

Satoko s’arrêta brusquement, comme saisie d’effroi par quelque chose qu’elle venait de voir.

Midori et Sayuri, surprises, regardèrent dans la même direction que Satoko.

Et là, il se passait quelque chose d’étrange au milieu de la rue. Le couvercle en fonte d’une bouche d’égout, là-bas, se soulevait lentement, crissant. Y avait-il quelqu’un dans la bouche d’égout ?

Le couvercle finit par s’ouvrir complètement. De dessous, un homme vêtu d’une cape noire surgit lentement. Il portait un large chapeau noir à larges bords, de grosses lunettes, une moustache dressée de chaque côté, et une barbichette noire en triangle.

Il avait l’allure inquiétante d’un démon occidental. L’homme sortit de la bouche d’égout, se dressa de toute sa hauteur sur le trottoir, regarda les trois filles et leur adressa un sourire narquois. Puis, faisant voleter sa cape noire comme des ailes de chauve-souris, il s’éloigna.

«Cet homme est louche. Eh, si on le suivait toutes les trois ?»

chuchota Midori. Son grand frère Toshio faisait partie du club des jeunes détectives, et Midori aussi aimait bien jouer aux détectives. Satoko et Sayuri, qui avaient l’habitude de suivre toutes les idées de Midori, se mirent donc à suivre l’homme au manteau noir.

Le mystérieux personnage traversa un grand terrain vague, puis entra dans la forêt au loin. Aux abords du quartier de Setagaya, il y a encore des champs et des bois. Comme il faisait jour, les trois filles n’avaient pas peur d’entrer dans la forêt. Poussées par la curiosité, elles continuèrent à le suivre.

Au cœur de la forêt se dressait un vieux manoir de style occidental.

«Oh, c’est la maison hantée !»

«Quelle peur… Qu’est-ce qu’on fait ?»

Ce manoir, autrefois habité par des Occidentaux, était maintenant vide et, dans le quartier, on l’appelait la maison hantée.

Les trois filles, qui habitaient tout près, connaissaient bien l’endroit.

On racontait qu’un soir, une boule de feu rouge était sortie de la fenêtre du deuxième étage du manoir. D’autres disaient avoir entendu, depuis l’intérieur vide, la voix lugubre d’une femme pleurer.

Alors que les trois fillettes s’apprêtaient à s’enfuir, un événement incroyable se produisit.

L’homme au manteau noir escalada la façade du manoir, sans échelle, glissant comme un serpent, et disparut par une fenêtre du deuxième étage.

Les trois filles, glacées d’effroi, voulurent s’enfuir, mais à ce moment-là, un cri perçant retentit du côté du manoir.

En entendant cela, elles se retournèrent instinctivement. À la fenêtre du deuxième étage, un visage pâle apparut. Il criait, «Kyaaa !» De loin, elles ne pouvaient pas bien voir, mais il s’agissait d’une fillette du même âge qu’elles, avec une coiffure au carré. Elle semblait hurler, sur le point d’être tuée.

«C’est sûrement cet homme au manteau noir qui la maltraite !»

Les trois filles pensèrent la même chose.

La fillette à la fenêtre luttait pour échapper à quelqu’un, mais elle fut finalement tirée en arrière et disparut de la fenêtre. À ce moment-là, les pleurs cessèrent brusquement, sans doute parce que l’homme lui avait couvert la bouche.

Affolées, les trois amies s’enfuirent à toutes jambes et rentrèrent chacune chez elle. Midori raconta aussitôt ce qui s’était passé à son père et à son frère Toshio.

«Quel dommage ! Si j’avais été là, j’aurais sûrement trouvé un indice !»

dit d’un air déçu Toshio, membre du club des jeunes détectives.

Le père de Midori téléphona à la police, qui se rendit aussitôt au manoir dans la forêt et inspecta les lieux, mais il n’y avait absolument personne, pas la moindre trace de vie dans la maison abandonnée. Qui donc était cet homme au manteau noir, semblable à un démon occidental ? Et qu’est-il advenu de la pauvre fillette ?

森の中の、ふるいせいようかんのまどから、小さい女の子が、たすけをもとめてなきさけんでいた、そのあくる日のこと。

ミドリちゃんのにいさんの木村敏夫くんは、さっそく、このことをしょうねんたんていだんちょうの小林くんに知らせましたので、小林だんちょうが、木村くんのうちへやってきました。

そして、ふたりで森の中のせいようかんをたんけんすることになりました。まっぴるまですから、こわいことはありません。でも、ふたりとも、たんてい七つどうぐのかいちゅうでんとうや、きぬ糸のなわばしごや、よぶこのふえなどは、ちゃんとよういしていました。

小林だんちょうと木村くんは、うすぐらい森の中をとおって、おばけやしきのせいようかんのまえに来ました。入口のドアをおしてみますと、なんなくひらきました。かぎもかかっていないのです。ふたりは中へはいり、ひろいろうかを、足音をたてないようにしてしのびこんでいきました。

かいちゅうでんとうをてらし、長いあいだかかって、一かいと二かいのぜんぶのへやをしらべましたが、だれもいないことがわかりました。まったくのあきやです。

「どうも、このへやがあやしいよ。なぜだかわからないが、そんな気がするんだ。」

一かいのひろいへやにもどったとき、小林くんが、ひとりごとのようにいいました。すると、ちょうどそのとき……。

どこからともなく、かすかに、かすかに、

「おじさん、かんにんして。あっ、こわいっ……たすけてえ……。」

というひめいがきこえてきました。小さい女の子の声のようです。

ふたりはぞっとして、たちすくんだまま、かおを見あわせました。

「ゆか下からきこえてきたようだね。」

小林くんが、くびをかしげながらいいました。するとまた、

「あれっ、いけないっ。早くたすけて。」と、かすかな声が……。

「どこかに、かくし戸があるにちがいない。どこだろう。」

小林くんは、かいちゅうでんとうをてらして、へやじゅうをさがしまわりました。

そのへやには、大きなだんろがついていて、そのだんろの下がわに、まるいぼっちが、ずっとならんでいます。かざりのちょうこくです。小林くんは、そのぼっちを一つ一つ、ゆびでおしてみました。すると、右から七ばんめのぼっちが、ちょうどベルのおしボタンのように、うごくことがわかったのです。小林くんは、それをぐっとおしてみました。すると……。

ガタンという音といっしょに、「あっ。」というさけび声。びっくりしてふりむくと、いままでそこにいた木村くんのすがたが、きえうせていました。

小林くんはびっくりして、そこへかけつけました。すると、ゆかいたに、四かくいあながぽっかりとあいていることがわかりました。ちかしつへのおとしあなです。小林くんが、だんろのぼっちをおしたので、それがひらいたのです。

「木村くん、だいじょうぶか。」

あなの中へ、かいちゅうでんとうをむけてよんでみました。

「う、う、う……だ、だいじょうぶだっ。」

木村くんがくるしそうにこたえました。見ると、あなの下に、すべりだいのようないたが、ずっとつづいています。小林くんは、思いきってそこへとびおりました。

すうっ……とすべりました。そして、どしんと、ちかしつのかたいゆかに、しりもちをつきました。

やっとのことでおき上がって、かいちゅうでんとうをてらしてみますと、そこは十じょうほどの、ひろいちかしつでした。しかし、ひめいをあげた女の子のすがたは、どこにも見えません。むこうのかべに、まっくらなほらあながあいています。そのむこうに、べつなちかしつがあるのでしょうか。

「あっ、きみ。あれ、なんだろう。」

木村くんが、おびえた声で、そのほらあなをゆびさしました。

ふたりのかいちゅうでんとうが、ぱっと、そこをてらしました。

まっくらなほらあなのおくで、ぎらぎら光った、二つのまるいものが、ちゅうにういているのです。そしてそれが、だんだんこちらへ近づいてくるではありませんか。

かいぶつの目です。なにかしらおそろしいものが、こちらへやってくるのです。まるでヤドカリが、かいがらの中からかおを出すように、それが、にゅっとくびを出しました。

「あっ。」

ふたりは、思わず声をたてて、おたがいのからだをだきあいました。

そのからだは、まっかでした。まっかな長い、大きなつの。そのねもとに、ぶきみなとんがった口。二つのぎらぎら光る目。おれまがった六本の長い足……。それは、にんげんほどの大きさの、まっかなカブトムシだったのです。

ああ、ふたりはどうなるのでしょう。

さっき、ひめいをあげたかわいそうな女の子は、いったいどうしたのでしょうか。

Le lendemain du jour où, à la fenêtre du vieux manoir dans la forêt, une petite fille avait crié en pleurant pour demander de l’aide, le grand frère de Midori, Toshio Kimura, alla rapporter l’affaire à Kobayashi, chef du club des jeunes détectives. Le chef Kobayashi se rendit alors chez les Kimura.

Ils décidèrent tous les deux d’aller explorer le vieux manoir dans la forêt. Comme il faisait grand jour, ils n’avaient pas peur. Mais tous deux avaient bien préparé leur équipement de détective : lampe de poche, corde-échelle en fil de soie, sifflet d’appel, etc.

Kobayashi et Kimura traversèrent la forêt sombre et arrivèrent devant le manoir hanté. Ils poussèrent la porte d’entrée, qui s’ouvrit sans difficulté : elle n’était même pas fermée à clé. Ils entrèrent et s’avancèrent sans bruit dans le long couloir.

S’éclairant avec leur lampe de poche, ils fouillèrent pendant un long moment toutes les pièces du rez-de-chaussée et du premier étage, mais il n’y avait absolument personne. La maison était complètement vide.

«Je ne sais pas pourquoi, mais j’ai un mauvais pressentiment à propos de cette pièce», murmura Kobayashi, comme pour lui-même, alors qu’ils revenaient dans une grande salle du rez-de-chaussée. C’est alors que…

De nulle part, très faiblement, ils entendirent :

«Monsieur, pitié… Ah, j’ai peur… À l’aide…»

C’était une voix de petite fille.

Les deux garçons, glacés, se regardèrent sans bouger.

«On dirait que ça vient d’en dessous du plancher», dit Kobayashi, en penchant la tête. Puis, à nouveau :

«Oh non, vite, à l’aide !» appela faiblement la voix.

«Il doit y avoir une porte secrète quelque part. Où peut-elle être ?»

Kobayashi éclaira toute la pièce à la recherche d’un indice.

Dans cette pièce, il y avait une grande cheminée, et sous la cheminée, une rangée de boutons ronds, des sculptures décoratives. Kobayashi les pressa un à un du doigt. Le septième bouton à partir de la droite s’enfonça comme une sonnette. Kobayashi appuya dessus. Alors…

Un bruit sourd retentit, accompagné d’un cri. En se retournant, il constata que Kimura avait disparu.

Affolé, Kobayashi se précipita à l’endroit où son ami se trouvait. Un carré béant s’était ouvert dans le plancher : c’était un piège menant à une cave souterraine. C’est en appuyant sur le bouton de la cheminée que le passage s’était ouvert.

«Kimura, ça va ?»

Il dirigea sa lampe de poche dans le trou et appela.

«O-Oui… ça va…» répondit Kimura d’une voix étouffée. En regardant, il vit qu’une planche, semblable à un toboggan, descendait dans le trou. Kobayashi prit son courage à deux mains et sauta à son tour.

Il glissa doucement… puis atterrit lourdement sur le sol dur de la cave.

Il se releva tant bien que mal, éclaira autour de lui avec sa lampe : c’était une grande cave d’environ dix tatamis. Mais la petite fille qui avait crié n’était nulle part. Au fond, un trou noir béait dans le mur. Peut-être y avait-il une autre cave derrière.

«Regarde ! Qu’est-ce que c’est ?» demanda Kimura d’une voix tremblante, en pointant le trou du doigt.

Les deux lampes de poche éclairèrent soudainement l’endroit.

Au fond du trou noir, deux ronds brillants flottaient dans l’obscurité et s’approchaient peu à peu.

C’étaient des yeux de monstre. Quelque chose d’effrayant venait vers eux. Comme un bernard-l’ermite sortant de sa coquille, la créature fit soudain apparaître sa tête.

«Ah !»

Les deux garçons, pris de panique, se serrèrent l’un contre l’autre.

La créature était rouge vif. De longues et grandes cornes rouges, une bouche pointue et inquiétante à leur base, deux yeux brillants, six longues pattes tordues… C’était un énorme scarabée rouge, aussi grand qu’un homme.

Que va-t-il arriver aux deux garçons ?

Et qu’est-il advenu de la pauvre petite fille qui avait crié tout à l’heure ?

小林くんと、だんいんの木村くんが、おばけやしきのせいようかんのちかしつで、にんげんほどもある、大きなまっかなカブトムシに出あいました。

ふたりは、ちかしつのすみで、そのおそろしいかいぶつを見つめていました。かいぶつをてらしている二つのかいちゅうでんとうのわが、ぶるぶるふるえています。

キーッ、キーッと、なんともいえないするどい音がしました。大きなカブトムシのなき声です。そのたびに、あのとんがった口が、ぱくぱくひらくのです。

大きなカブトムシは、長い六本の足を、きみわるく、がくん、がくんとうごかしながら、ちかしつの中をぐるぐると歩きまわりました。

しばらく歩きまわったあとで、いよいよこちらに近づいてきました。カブトムシのせなかは、まっかにてらてらと光っています。ときどき、大きなはねをひらいて、ぶるんとはばたきのようなことをします。そのたびにおそろしい風がおこるのです。もう、二メートルほどに近づいてきました。とび出した大きな目が、ぎょろりと、ふたりをにらんでいます。

いまにもとびかかってくるかと、ふたりは思わずみがまえました。カブトムシは、あと足をまげ、中の足とおしりでちょうしをとって、ぐうっとたち上がり、まえ足をもがもがやっています。きみわるいおなかが、すぐ目のまえに見えました。あのまえ足でつかみかかってくるにちがいないと、いよいよみをかたくしていますと……。

ああ、そのとき、じつにおどろくべきことがおこりました。カブトムシのおなかの中に、ぽかんと、四かくいあながあいたのです。四かくいふたのようなものが、下の方へひらいて、そのふたが、すべりだいのように、ゆかにとどいたのです。すると、おなかの中から、なにかもごもごと、うごめき出してきたではありませんか。

おなかの四かくいあなからはい出してきたのは、長さ五十センチぐらいの、まっかなカブトムシでした。大カブトムシのはらから、中カブトムシが出てきたのです。まさか、子どもを生んだわけではないでしょう。大カブトムシは、プラスチックかなにかでできている作りものかもしれません。そのはらから出てきた中カブトムシも、五十センチもあるのですから、きっと作りものなのでしょう。

中カブトムシは、ゆかにたれたふたのすべりだいをはいおりて、そのへんをぐるぐると歩きまわりました。

大カブトムシのほうは、そのまま、ごろんとあおむけにひっくりかえって、まるでしがいのようにじっとしています。

大きなセミのぬけがらみたいです。

中カブトムシは、ちかしつをぐるぐるまわったあとで、ふたりのまえへ来ると、ぐうっとたち上がりました。大カブトムシとおなじことをするのです。また、おなかに、ぽかんとあながあきました。そして、そこから、こんどは十五センチぐらいの、かわいいカブトムシがはい出してきました。

かわいいといっても、十五センチですから、ほんとうのカブトムシのなんばいもある、からだじゅうまっかなおばけカブトムシです。中カブトムシのほうは、また、セミのぬけがらのように、ごろんところがっています。

十五センチの小カブトムシは、ちょこちょことそのへんをはいまわっていましたが、やがて、ふたりのまえに来ると、またしてもあと足でひょいとたち上がりました。

そして、おなじことをくりかえしたのです。十五センチのカブトムシのおなかに、四センチほどの四かくいあながあいて、そこから、こんどは、ほんものとおなじくらいの大きさのまっかなカブトムシが、ゆかの上にすべり出しました。

ところが、この小さいカブトムシは、十五センチのカブトムシがぬけがらになってころがってしまっても、すこしもうごかないのです。

ゆかにおちたまま、じっとしています。これは、しんでいるのでしょうか。

それにしても、なんてかわいらしく、うつくしいカブトムシなのでしょう。いままでの大カブトムシとちがって、これは、まっかな色がルビーのようで、からだの中まですきとおっています。かわいらしい二つの目は、まるでダイヤのようにかがやいています。

「あっ。」

木村くんが、びっくりするような声をたてました。そのとき、むこうのほらあなの中から、なにか黒いものがはい出してきたからです。

それは、あなから出ると、すっくとたち上がりました。にんげんです。黒いマントをきた、せいようあくまのような、おそろしい人です。

「わははは……。小林くん、ひさしぶりだなあ。わしをわすれたかね。ほら、いつか『おうごんのとら』のとりっこで、ちえくらべをしたまほうはかせだよ。」

小林くんは、思わずまえにすすみ出ました。

「あっ、それじゃ、あのときの……。」

「わははは……。こんどもきみたちは、まんまとわしのけいりゃくにかかったね。」

Kobayashi et son camarade Kimura se retrouvèrent dans la cave du manoir hanté, face à un énorme scarabée rouge, aussi grand qu’un homme.

Les deux garçons, terrifiés, observaient la créature monstrueuse depuis un coin de la cave. Les faisceaux de leurs lampes de poche tremblaient de peur.

Un cri strident et perçant retentit : c’était le cri du grand scarabée. À chaque cri, sa bouche pointue s’ouvrait et se refermait.

Le scarabée géant, agitant ses six longues pattes d’une manière inquiétante, se mit à tourner en rond dans la cave. Après avoir marché un moment, il s’approcha enfin d’eux. Son dos brillait d’un rouge éclatant. Parfois, il ouvrait ses grandes ailes, provoquant un souffle effrayant. Il n’était plus qu’à deux mètres d’eux. Ses grands yeux saillants les fixaient intensément.

Les deux garçons se tinrent prêts, s’attendant à ce que d’un instant à l’autre la créature bondisse sur eux. Le scarabée plia ses pattes arrière, s’équilibra sur ses pattes du milieu et son abdomen, se dressa, agita ses pattes avant. Son ventre effrayant apparut juste devant eux. Ils étaient certains qu’il allait les attraper avec ses pattes avant, et se tenaient prêts quand…

À ce moment-là, il se produisit quelque chose de vraiment incroyable. Dans le ventre du scarabée, une ouverture carrée s’ouvrit. Une sorte de couvercle carré s’abaissa comme un toboggan jusqu’au sol. Et de cette ouverture, quelque chose commença à ramper dehors.

Ce qui sortit du ventre du scarabée était un autre scarabée rouge, d’environ cinquante centimètres de long. Un scarabée moyen sortait du ventre du grand scarabée. Il ne s’agissait probablement pas d’un vrai bébé, mais plutôt d’un mécanisme en plastique ou autre. Ce scarabée moyen, lui aussi d’environ cinquante centimètres, devait donc être un faux.

Le scarabée moyen descendit le toboggan formé par le couvercle et se mit à tourner en rond dans la cave.

Quant au grand scarabée, il se renversa sur le dos et resta immobile, comme une mue de cigale géante.

Le scarabée moyen, après avoir tourné dans la cave, s’approcha des deux garçons, se dressa comme le précédent, et une ouverture carrée s’ouvrit à son tour dans son ventre. Cette fois, un petit scarabée rouge, d’environ quinze centimètres, en sortit.

Petit, mais tout de même bien plus grand qu’un vrai scarabée, et tout rouge, c’était un véritable scarabée fantôme. Le scarabée moyen, lui aussi, se renversa comme une mue de cigale.

Le petit scarabée de quinze centimètres se mit à ramper partout, puis, arrivé devant les deux garçons, se dressa à son tour sur ses pattes arrière.

Il répéta la même chose : une ouverture carrée d’environ quatre centimètres s’ouvrit dans son ventre, et cette fois, un scarabée rouge, de la taille d’un vrai scarabée, glissa sur le sol.

Mais ce petit scarabée, une fois sorti, ne bougea plus, même lorsque le scarabée de quinze centimètres s’effondra comme une mue vide. Il resta immobile sur le sol. Était-il mort ?

Quoi qu’il en soit, ce scarabée était d’une beauté étonnante. Contrairement aux précédents, il avait une couleur rouge rubis, translucide jusqu’à l’intérieur de son corps. Ses deux yeux adorables brillaient comme des diamants.

«Oh !» s’exclama Kimura, stupéfait. Car, à ce moment-là, une forme noire surgit du fond du trou.

Elle sortit du trou et se dressa de toute sa hauteur. C’était un homme. Un homme effrayant, vêtu d’une cape noire, ressemblant à un démon occidental.

«Wahahaha… Kobayashi, ça fait longtemps ! Tu m’as oublié ? C’est moi, le professeur de magie, celui avec qui tu as rivalisé d’ingéniosité pour le “Tigre d’or”.»

Kobayashi s’avança, surpris.

«Ah, alors c’était toi, cette fois encore…»

«Wahahaha… Cette fois encore, mon piège a fonctionné à la perfection !»

おばけやしきのちかしつにしのびこんだ小林・木村くんのまえに、黒いマントをきた、せいようあくまのようなおそろしい人があらわれました。

「わしは、いつか、きみたちしょうねんたんていだんと、ちえくらべをしたまほうはかせだよ。じつは、もう一ど、きみたちのちえをためすために、ここへおびきよせたのだ。

このまえは『おうごんのとら』だったが、こんどは、この赤いカブトムシだ。これはルビーでできている。二つの目は、ダイヤモンドだ。わしのだいじなたからものだよ。これをきみたちにわたすから、このまえのようにちえをしぼって、うまくかくしてごらん。わしは、五日のあいだにそれをさがしだして、ぬすんでみせるよ。ぬすまれたら、このちえくらべは、きみたちのまけなのだ。」

それをきくと、「ああ、あのときのまほうはかせだったのか。」

と、やっとあんしんしましたが、でも、まだわからないことがあります。

「きのう、このせいようかんの外がわを、はしごもないのに、するするとのぼっていったのはおじさんだったの。それから、まどからのぞいていた女の子は、どうしたのです。おじさんがいじめていたのでしょう。」

「うふふふ……。あれは、きみたちを、ここへおびきよせる手なのだよ。木村くんのいもうとのミドリちゃんたちが見ているのを知っていて、ふしぎなことをやってみせたのだ。あのときは、このうちのやねから、ほそい、じょうぶな糸のなわばしごがさげてあって、それをつたってのぼったのさ。夕がただから、とおくからは、その糸が見えなかったのだよ。

あのときの女の子は、にんぎょうだよ。ほら、これをごらん。」

まほうはかせは、マントの下にかくしていた、大きなにんぎょうを出してみせました。

「でも、きのうの女の子は、かなしそうなさけび声をたてていたというじゃありませんか。」

小林くんがききかえすと、はかせはにやにやわらって、よこをむきました。

「きゃあ。たすけてえ。」

女の子のおそろしいさけび声がきこえました。ふたりはびっくりして、にんぎょうのかおを見ましたが、べつに、口がうごいているわけでもありません。「ははは……。ふくわじゅつだよ。わしが、口をうごかさないで、女の子の声をまねたのだ。きのうのさけび声は、これだったのだよ。」

このたねあかしをきいて、ふたりは、すっかりあんしんしました。そして、まほうはかせからルビーのカブトムシをうけとると、おばけやしきを出て、小林くんの[#「小林くんの」はママ]うちにかえり、おとうさんやおかあさんやミドリちゃんに、そのことを話しました。それから、ふたりで、明智たんていじむしょへいそぎました。そして、明智先生にも、まほうはかせのことをほうこくするのでした。

それからしばらくすると、小林くんがでんわでよびよせた、十人のしょうねんたんていだんいんが、明智たんていじむしょへあつまってきましたが、その中にひとりだけ、女の子がまじっていました。中学一年の宮田ユウ子ちゃんという、ついこのごろなかま入りをした、たったひとりのしょうじょだんいんです。年のわりにからだが大きく、いかにもかわいい女の子でした。

「あたし、いいこと思いついたわ。そのカブトムシ、あたしのうちへかくすといいわ。」

みんなでそうだんをしているうちに、ユウ子ちゃんが、そんなことをいいだしました。そして、小林だんちょうの耳に口をよせて、なにか、ひそひそとささやくのでした。

つぎつぎとささやきかわして、ユウ子ちゃんの考えがわかると、みんなは手をたたいて、「それがいい、それがいい。」とさんせいしました。

ユウ子ちゃんは、ルビーのカブトムシをポケットに入れ、その上を手でしっかりおさえて、しょうねんたちにおくられてうちへかえりました。ユウ子ちゃんのうちは、せっこうのおきものを作るのがしょうばいで、うらに、小さなこうばがあるのです。

ユウ子ちゃんは、そのこうばの中へはいっていきました。こうばには、しょうねんのくびや、ビーナス(めがみ)や、花かごをさげた女の子などのせっこうのおきものが、たくさんならんでいます。

すっかりできあがったものもあり、まだできあがらないで、これからつぎあわせるのもあります。ユウ子ちゃんは、このせっこうの中へ、カブトムシをかくそうというのでしょうか。

そんなことで、うまくまほうはかせの目をくらますことができるのでしょうか。なにか、もっとふかい考えがあるのかもしれません。

ユウ子ちゃんが、せっこうのおきもののまん中にしゃがんでいますと、ガラスまどの外に、おそろしいかおがあらわれました。かおじゅうひげにうずまったきたない男が、そっと、中をのぞいているのです。

このひげの男は、いったいなにものなのでしょう。そして、しょうねんたちが手をたたいてよろこんだユウ子ちゃんのちえというのは、どんなことだったのでしょう。

やがて、じつにきみょうなことがおこるのです。この、かおじゅうひげにうずまった、えたいの知れない男が、とほうもないことをやりはじめるのです。

Dans la cave du manoir hanté, devant Kobayashi et Kimura, apparut un homme effrayant vêtu d’une cape noire, ressemblant à un démon occidental.

«Je suis le professeur de magie qui, autrefois, a mesuré son intelligence aux vôtres, membres du club des jeunes détectives. En réalité, je vous ai attirés ici pour tester à nouveau votre sagacité.

La dernière fois, il s’agissait du “Tigre d’or”, mais cette fois, c’est ce scarabée rouge. Il est fait de rubis. Ses deux yeux sont des diamants. C’est mon précieux trésor. Je vais vous le confier : essayez donc de le cacher aussi habilement que la dernière fois. Je vous donne cinq jours pour le cacher. Pendant ce temps, je tenterai de le retrouver et de vous le voler. Si j’y parviens, vous aurez perdu ce duel d’ingéniosité !»

En entendant cela, les garçons furent soulagés : «Ah, c’était donc le professeur de magie de l’autre fois !» Mais ils avaient encore des questions.

«Hier, c’était vous qui avez grimpé sans échelle le long du mur du manoir ? Et la fillette qu’on a vue à la fenêtre, qu’est-elle devenue ? Vous ne lui avez rien fait, n’est-ce pas ?»

«Héhéhé… C’était un stratagème pour vous attirer ici. Je savais que Midori, la petite sœur de Kimura, et ses amies m’observait, alors j’ai fait exprès quelque chose d’étrange. À ce moment-là, une corde fine et solide descendait du toit de la maison, et je l’ai utilisée pour grimper. Comme c’était le crépuscule, on ne la voyait pas de loin.

Quant à la fillette à la fenêtre, ce n’était qu’une poupée. Regardez, la voici.»

Le professeur de magie sortit de sous sa cape une grande poupée.

«Pourtant, hier, la fillette criait d’une voix très triste, non ?» demanda Kobayashi. Le professeur de magie sourit et détourna la tête.

«Kyaaa ! À l’aide !»

Le cri d’une fillette retentit. Les deux garçons, surpris, regardèrent la poupée, mais sa bouche ne bougeait pas.

«Hahaha… C’est du ventriloquisme. J’ai imité la voix de la fillette sans bouger les lèvres. Les cris d’hier, c’était moi !»

Rassurés par cette révélation, les deux garçons prirent le scarabée de rubis des mains du professeur de magie, quittèrent le manoir hanté et rentrèrent chez Kobayashi, où ils racontèrent tout à leur père, leur mère et à Midori. Ensuite, ils se rendirent en hâte au bureau du détective Akechi pour lui parler du professeur de magie.

Peu après, les dix membres du club des jeunes détectives, convoqués par téléphone par Kobayashi, se rassemblèrent au bureau d’Akechi. Parmi eux, il y avait une seule fille : Yûko Miyata, élève de première année de collège, qui venait juste d’entrer dans le club. Elle était grande pour son âge et vraiment mignonne.

«J’ai une idée ! On pourrait cacher le scarabée chez moi !» proposa Yûko pendant la discussion. Puis elle se pencha à l’oreille du chef Kobayashi et lui murmura quelque chose.

Après s’être tous chuchoté à l’oreille, ils comprirent le plan de Yûko et applaudirent : «Bonne idée, c’est parfait !»

Yûko mit le scarabée de rubis dans sa poche, le couvrit bien de sa main et, accompagnée par les garçons, rentra chez elle. Sa famille fabriquait des statuettes en plâtre, et il y avait un petit atelier derrière la maison.

Yûko entra dans l’atelier. À l’intérieur, il y avait de nombreuses statuettes en plâtre : des têtes de garçon, des Vénus, des fillettes portant des corbeilles de fleurs, etc.

Certaines étaient terminées, d’autres attendaient d’être assemblées. Yûko allait-elle cacher le scarabée parmi ces statuettes ?

Est-ce que cela suffira à tromper le professeur de magie ? Ou bien a-t-elle une idée plus subtile ?

Alors qu’elle s’accroupissait au milieu des statuettes, un visage effrayant apparut derrière la fenêtre. Un homme sale, le visage couvert de barbe, regardait discrètement à l’intérieur.

Qui était donc cet homme barbu ? Et quelle était l’astuce ingénieuse de Yûko qui avait tant réjoui les garçons ?

Bientôt, un événement des plus étranges allait se produire. Cet homme mystérieux à la barbe épaisse allait se livrer à des actes incroyables…

しょうねんたんていだんのたったひとりのしょうじょだんいん、宮田ユウ子ちゃんは、ルビーでできた赤いカブトムシをもって、じぶんのうちのせっこうざいくのこうばにはいって、なにかやっていました。すると、そのとき、まどの外から、かおじゅうひげでうずまった、きたない男が、そっとのぞいていたのです。

そのあくる日の夕がた、ユウ子ちゃんのおうちのある渋谷区で、つぎつぎとふしぎなことがおこりました。ある町のがくぶちやさんへもじゃもじゃあたまの、きたない男がはいってきて、ショーウインドーにかざってあった、五、六さいのかわいいしょうねんの、くびだけのせっこうぞうをかっていきました。

男は、みせを出ると、さびしいよこちょうに、はいり、あたりを見まわしてから、紙づつみをといて、せっこうのしょうねんのくびを、いきなりじめんにたたきつけ、こなごなにわってしまいました。

せっかくかったせっこうぞうを、なぜわったのでしょう。この男は、気でもちがってしまったのでしょうか。

それから、三十分もすると、その男は、べつの町のびじゅつしょうのみせにあらわれました。そして、そこでも、さっきとおなじしょうねんのくびのせっこうぞうをかい、また、さびしいよこちょうへ来ると、こなみじんにわってしまいました。また、三十分ほどたったころ、こんどは、おなじ渋谷区のあるおやしきへ、あの男がしのびこんでいきました。

その家のおうせつまにも、おなじせっこうのしょうねんのくびがありました。男は、まどからはいりこんでそのくびをぬすみとると、近くのじんじゃの森で、またこなごなにこわしてしまいました。

「だめだ、はいっていない。あのとき、まだつぎあわされていないせっこうは、この三つだけだったのに……。」

男は、とほうにくれたように、たちつくしていました。そのとき、ふいにうしろから、女の子のわらい声がきこえてきました。

男が、びっくりしてふりむくと、大きな木のうしろから出てきたのは、ユウ子ちゃんです。

「おじさん、いっぱいくったわね。このちえくらべは、しょうねんたんていだんのかちよ。

おじさんは、あたしが、せっこうぞうの中へ、赤いカブトムシをかくすのをまどから見ていたのでしょう。ところが、あれは、かくすように見せかけただけなのよ。ほんとうは、もっとべつのところにかくしてあるのよ。」

ユウ子ちゃんは、そういって、さもおもしろそうにわらうのでした。

「そうか、うまくやりやがったな。おれは、あれをぬすもうと思ったが、いつもこうばに人がいたので、ぬすみ出すことができなかった。

しかたがないから、あの三つの子どものくびがはいたつされるのをまって、そのさきを一けんずつまわってこわしてみたが、なんにも出てこなかった。まんまといっぱいくわされたな。わっは、は、は……。」

男は、べつにおこるようすもなく、大わらいをして、それから、ふっとまじめなかおになりました。

「ところがね、おじょうさん。まほうはかせは、もっと上手なんだぜ。おれは、はかせのでしで、きみを、ほうぼうひっぱりまわすやくだったのさ。きみが、おれのあとをつけているまに、まほうはかせが、きみのかくした赤いカブトムシを、ちゃんとぬすみ出してしまったのだよ。は、は、は、は……。」

それをきくと、ユウ子ちゃんは、はっとして、まっさおになってしまいました。

そして、ものもいわず、いきなりどこかへかけだしていくのでした。男は、あとを見おくって、にやりとわらいました。

ユウ子ちゃんは、バスにのっておうちへかえると、小さなシャベルをもって、うら口の外のはらっぱへいそぎました。

ひざまでかくれる草をかきわけて、はらっぱのまん中まで行くと、目じるしの石をとりのけて、その下をシャベルでほりかえし、かくしておいたブリキカンをとり出しました。

「まあ、よかった。あの人、うそをついたのだわ。」

かんの中には、赤いカブトムシが、ちゃんとはいっていたではありませんか。

「うふ、ふ、ふ、ふ。こんどは、きみのほうでいっぱいくったね。」

とつぜんうしろから声がして、さっきの男がたっていました。

「まほうはかせが、ぬすみ出したというのはうそさ。まほうはかせは、このわしだよ。あんなことをいって、きみを、ほんとのかくしばしょに来させたのさ。さあ、そのカブトムシを出しなさい。」

男は、にゅっと手をつき出しました。

Yûko Miyata, seule fille membre du club des jeunes détectives, était entrée dans l’atelier de statues en plâtre de sa famille avec le scarabée rouge en rubis, et faisait quelque chose à l’intérieur. C’est alors qu’un homme sale, le visage entièrement couvert de barbe, l’observait discrètement par la fenêtre.

Le lendemain soir, des événements étranges se succédèrent dans le quartier de Shibuya où habitait Yûko. Un homme sale aux cheveux ébouriffés entra dans une boutique de cadres et acheta un buste en plâtre exposé en vitrine qui représentait un adorable garçonnet de cinq ou six ans.

En sortant du magasin, il s’engagea dans une ruelle déserte, regarda autour de lui, déballa le paquet et fracassa le buste en plâtre sur le sol, le réduisant en miettes.

Pourquoi avoir brisé la statue qu’il venait d’acheter ? Cet homme avait-il perdu la raison ?

Environ trente minutes plus tard, le même homme entra dans une boutique d’objets d’art d’un autre quartier, acheta à nouveau un buste identique et, dans une ruelle déserte, le brisa encore en mille morceaux. Puis, une demi-heure plus tard, il s’introduisit dans une grande maison du même quartier de Shibuya.

Dans le salon de cette maison, il y avait un buste en plâtre identique. L’homme entra par la fenêtre, le vola et, dans le bois du sanctuaire voisin, le brisa à nouveau en morceaux.

«Non, ça ne va pas, il n’y a rien dedans… Pourtant, il n’y avait que ces trois bustes non assemblés à ce moment-là…»

L’homme, désemparé, restait là, sans bouger. Soudain, il entendit un rire de fillette derrière lui.

Surpris, il se retourna et vit Yûko sortir de derrière un grand arbre.

«Monsieur, vous vous êtes bien fait avoir ! Ce concours d’ingéniosité, c’est le club des jeunes détectives qui l’a gagné.

Vous m’avez vue cacher le scarabée rouge dans une statue en plâtre depuis la fenêtre, n’est-ce pas ? Mais en réalité, je faisais seulement semblant de le cacher là. La vraie cachette était ailleurs !» dit Yûko, riant de bon cœur.

«Ah, tu m’as bien eu ! J’ai voulu le voler, mais il y avait toujours quelqu’un dans l’atelier, alors je n’ai pas pu. J’ai donc attendu que les trois bustes soient livrés, puis je les ai retrouvés un par un pour les casser, mais il n’y avait rien à l’intérieur. Je me suis bien fait avoir ! Wahaha !»

L’homme, loin d’être fâché, éclata de rire, puis soudain prit un air sérieux.

«Mais tu sais, jeune fille, le professeur de magie est encore plus malin que moi. Je ne suis que son disciple, chargé de te promener partout. Pendant que tu me suivais, le professeur de magie a déjà volé le scarabée rouge que tu avais caché. Hahaha !»

En entendant cela, Yûko pâlit subitement.

Sans dire un mot, elle se mit à courir quelque part. L’homme, avec un sourire en coin, la regarda s’éloigner.

Yûko, de retour chez elle en bus, prit une petite pelle et se précipita dans le terrain vague derrière la maison. Écartant les hautes herbes, elle s’avança jusqu’au milieu du terrain, retira une pierre qui lui servait de repère, creusa à cet endroit et sortit une boîte en fer-blanc.

«Ouf, c’est bon ! Il a menti !»

À l’intérieur de la boîte se trouvait bien le scarabée rouge.

«Héhé, cette fois, c’est toi qui t’es fait avoir !»

Une voix avait soudain retenti derrière elle : l’homme était là.

«Ce que j’ai dit sur le professeur de magie qui avait volé le scarabée, c’était un mensonge. Le professeur de magie, c’est moi. J’ai dit ça pour te faire venir jusqu’à la vraie cachette. Allez, donne-moi ce scarabée !» dit l’homme en tendant brusquement la main.

ユウ子ちゃんは、まほうはかせにうまくだまされて、赤いカブトムシのかくしばしょを見つけられてしまいました。

そこは、さびしい原っぱですし、あい手はおとなのまほうはかせ。こちらは、小さい子どもですから、どうすることもできません。とうとう、ルビーのカブトムシを、とりあげられてしまいました。

「さあ、こんどは、きみたちがさがす番だよ。わしが、このカブトムシを、ふしぎなばしょへかくすからね。うまく見つけ出してごらん。

は、は、は、は……。かわいそうに、なきべそをかいているね。よしよし、それじゃ、かくしばしょのひみつを、きっと、きみにおしえてあげるよ。まっているがいい。」

まほうはかせは、そういって、どこかへたちさってしまいました。

それから三日めの、おひるすぎのことです。ユウ子ちゃんが、うちのにわであそんでいますと、赤いゴムふうせんが、空からふわふわとおちてきました。

どこかの子どもが、ふうせんの糸をはなして、空へとび上がったのが、力が弱くなっておちてきたのでしょう。

ユウ子ちゃんがそう思って、赤いふうせんをじっと見ていますと、やがてそれは、すぐ目の前のじめんにおちました。

ふうせんには糸がついていて、その糸のはしに、白いものがくくりつけてあります。ユウ子ちゃんは、なんだろうと思って、それをひろってしらべてみました。

それは、紙をこまかくおりたたんだものでした。ていねいにのばしてみると、その紙には、こんなへんなことが書いてあります。

五月二十五日午後三時二十分、一本スギのてっぺんからはいれ。おそろしい番人に注意せよ。

まほうはかせ

「あらっ、まほうはかせからの手紙だわ。」

ユウ子ちゃんは、むねがどきどきしてきました。

まほうはかせは、このあいだのやくそくをまもって、ユウ子ちゃんに、カブトムシのかくしばしょをおしえてくれたのかもしれません。

ユウ子ちゃんは、すぐにその紙をもって、電車に乗って麹町の明智たんていじむしょをたずね、小林しょうねんにそうだんしました。

「五月二十五日といえば、あさってだね。あさって、一本スギのところへ行けばいいんだね。一本スギって、なんだか聞いたことがあるよ。あっ、そうだ。木村敏夫くんの家のそばの、まほうはかせのばけものやしきのむこうに、たしか、一本スギっていうのがあった。木村くんに、でんわで聞いてみよう。」

でんわをかけますと、やっぱりそこに、一本スギという、高いスギの木があることがわかりました。

そして、五月二十五日午後三時に、小林くんたち五人のだんいんが、一本スギのある原っぱへやって来ました。

五人というのは、小林だんちょうとユウ子ちゃんと、木村敏夫くんと、それから、だんいんの中でいちばん力の強い井上一郎くんと、野呂一平くんでした。一平くんは、ノロちゃんというあだ名で、おくびょうものだけれども、すばしこくて、よく気のつく子でした。

「一本スギのてっぺんからはいれって、どういういみだろう。」

小林くんがくびをかしげていますと、ノロちゃんが、とんきょうな声で、

「きっと、てっぺんにあながあいているんだよ。そこからはいるんだよ。ぼく、のぼってみようか。」

といって、こしにまきつけていた長いなわをほどき始めました。

ノロちゃんは、木のぼりのめいじんで、きょうは、スギの木にのぼらなければならないだろうと思って、そのよういをしてきたのです。

ノロちゃんは、なげなわもじょうずでした。その長いなわを、くるくるとまわして、ぱっとスギの木の高いえだになげかけました。そして、一方のはしを、自分のからだにしばりつけ、一方のはしを、みんなにひっぱってもらうのです。

つなひきみたいに、みんながなわをひっぱると、ノロちゃんはそれを力にして、ふといスギのみきを、するするとのぼっていきました。

そして、下のえだまでのぼりつけば、あとは、えだからえだへとつたっていけばいいのです。

ノロちゃんは、とうとう、スギの木のてっぺんまでたどりつきました。

そして、しばらくそのへんをさがしていましたが、

「なんにもないよう。あななんて、どこにもあいていないよう。」

とさけぶ声が、はるかにきこえました。これは、どうしたわけでしょう。

「てっぺんからはいれ。」といったって、あながなければ、はいれないではありませんか。

ノロちゃんは、五分ほども木のてっぺんで、じっとしていましたが、やがて、なにを思ったのか、とんきょうな声で、

「わかったよう。あれだよう、あれをごらん。」

とさけんで、原っぱの一方をゆびさしてみせるのでした。そこには、たいようの光をうけて、一本スギのかげが、長々とよこたわっていました。

みなさん、ノロちゃんは、いったいなにに気づいたのでしょうか。

Yûko s’est fait avoir par le professeur de magie, qui a réussi à découvrir la cachette du scarabée rouge. L’endroit était un terrain vague et, face à un adulte comme le professeur de magie, une petite fille ne pouvait rien faire. Finalement, il lui a pris le scarabée en rubis.

«Cette fois, c’est à vous de chercher. Je vais cacher ce scarabée dans un endroit mystérieux. Essayez donc de le retrouver.

Ha, ha, ha… Pauvre petite, tu es toute prête à pleurer. Bon, très bien, je te promets de te révéler le secret de la cachette. Attends un peu.»

Sur ces mots, le professeur de magie disparut quelque part.

Trois jours plus tard, dans l’après-midi, alors que Yûko jouait dans le jardin de sa maison, un ballon rouge en caoutchouc descendit doucement du ciel. Sans doute un enfant avait-il lâché la ficelle et le ballon, s’était envolé puis était retombé, ayant perdu de sa force.

Yûko, intriguée, observa le ballon rouge qui tomba juste devant elle. Une ficelle y était attachée, et à son extrémité pendait un objet blanc. Curieuse, elle le ramassa et l’examina.

C’était un morceau de papier soigneusement plié. Lorsqu’elle le déplia, elle lut ce message étrange :

«Le 25 mai à 15h20, entre par le sommet du grand cèdre. Prends garde au terrible gardien.

Le professeur de magie»

«Oh, c’est une lettre du professeur de magie !» s’exclama Yûko, le cœur battant.

Peut-être que le professeur de magie, tenant sa promesse, lui indiquait la cachette du scarabée.

Yûko partit aussitôt avec le papier, prit le train et se rendit au bureau du détective Akechi à Kôjimachi, pour demander conseil à Kobayashi.

«Le 25 mai, c’est après-demain. Il faudra aller au grand cèdre ce jour-là. Le grand cèdre… ça me dit quelque chose. Ah, oui ! Près de chez Toshio Kimura, derrière le manoir du professeur de magie, il y a justement un arbre qu’on appelle le grand cèdre. Je vais appeler Kimura pour vérifier.»

Après un coup de téléphone, ils confirmèrent qu’il y avait bien un grand cèdre près de là.

Le 25 mai à 15h, Kobayashi et quatre autres membres du club — Yûko, Toshio Kimura, Ichirô Inoue (le plus fort du groupe), et Ippei Noro (surnommé Noro-chan, peureux mais vif et observateur) — se rendirent sur le terrain où se trouvait le grand cèdre.

«Que veut dire “entre par le sommet du grand cèdre” ?» se demanda Kobayashi.

Noro-chan lança alors d’une voix aiguë :

«Il doit y avoir un trou au sommet ! On doit entrer par là ! Je vais grimper pour voir.»

Il défit la longue corde qu’il avait apportée, car il s’était préparé à devoir grimper à l’arbre. Noro-chan était un as de l’escalade. Il fit tournoyer la corde et la lança autour d’une haute branche du cèdre. Il attacha un bout à sa taille, l’autre fut tiré par les autres comme au tir à la corde, ce qui lui permit de grimper facilement le tronc épais.

Arrivé à la première branche, il progressa de branche en branche jusqu’au sommet du cèdre.

Après avoir cherché un moment, il cria de loin :

«Il n’y a rien ! Je ne vois aucun trou !»

Que pouvait-il bien se passer ? S’il n’y a pas de trou, comment entrer par le sommet ?

Noro-chan resta cinq minutes au sommet, puis, tout à coup, il s’écria :

«J’ai compris ! Regardez là-bas !»

Il montra du doigt un côté du terrain, où l’ombre du grand cèdre s’étirait longuement sous la lumière du soleil.

Qu’a donc remarqué Noro-chan ?

こんどは、少年たんていだんが、ルビーのカブトムシをさがす番でした。

五月二十五日午後三時二十分、一本スギのてっぺんからはいれ。おそろしい番人に注意せよ。

という手紙のとおりに、小林だんちょうとユウ子ちゃんと、木村くんと井上くんと、ノロちゃんの五人が、世田谷区の一本スギの原っぱへやって来ました。

木のぼりのめいじんのノロちゃんが、高いスギの木のてっぺんへのぼりましたが、はいるあななんて、どこにもありません。ノロちゃんは、しばらく、あたりを見まわしていましたが、なにを思ったのか、原っぱに長くよこたわっているスギの木のかげをゆびさしながら、さけびました。

「あそこだよ。あそこに、入口があるんだよ。」

それを聞くと、小林だんちょうも、はっとそこへ気がつきました。

「ああ、そうだ。てっぺんというのは、スギの木のてっぺんのかげのところなんだ。」

ノロちゃんが木からおりるのをまって、みんなで、スギの木のかげのさきっぽまで行ってみました。

そのへんには、たけの高い草がしげっています。小林くんは、この草の中へふみこんでいってさがしていましたが、やがて、

「あっ、ここにほらあながある。ここが、入口にちがいないよ。」

と、みんなをよびあつめました。それは、さしわたし六十センチぐらいのせまいあなでした。

中はまっくらですから、井上くんと木村くんが、よういのかいちゅうでんとうをつけ、井上くんがさきになって、あなの中へはいこんでいきました。

せまいところは三メートルほどで終り、にわかにあながひろくなって、下の方へ、石だんがついています。もうたって歩けるのです。

石だんをおりると、しょうめんに、大きな鉄のとびらがしまっています。まほうはかせの手紙には、「おそろしい番人に注意せよ。」と書いてありました。きっと、そのおそろしいやつが、とびらのむこうにまちかまえているのだろうと思うと、みんな、むねがどきどきしてきました。

でも、ここまで来て、ひきかえすわけにはいきません。

井上くんは、とびらのとってをつかんでおしてみました。

すると、かぎもかけてないらしく、鉄のとびらは、キイッとぶきみな音をたてて、むこうへひらきました。

かいちゅうでんとうで、その中をてらしてみましたが、なんにもありません。ただ、まっくらなほらあなが、ずっとおくの方へつづいているばかりです。

五人は、井上くんをさきにたてて、おずおずとそのくらやみの中へはいっていきました。

おくびょうもののノロちゃんは、ぶるぶるふるえながら、小林だんちょうについていきました。それに、ユウ子ちゃんは、女の子ですから、まもってやらなければなりません。小林くんは、両手で、ノロちゃんとユウ子ちゃんの手をひいて、すすんでいきます。すこし行くと、ほらあなのまがりかどへ来ました。

そこをひょいとまがると、みんなは「あっ。」といったまま、たちすくんでしまいました。すぐ目の前に、とほうもなく大きなばけものがうずくまっていたからです。そのかおはきいろで、まっ黒なふといしまがついていました。せんめんきほどの大きな目が、やみの中で光っていました。

ステッキをたばにしたような、ふといひげのはえた大きな口、その口から二本の白いきばが、にゅっとつき出ています。トラを百ばいも大きくしたようなばけものです。そのおそろしいかおが、ほらあないっぱいになって、あごが、じめんについているのです。

どこからか、なまぐさい、強い風がふきつけてきました。

「うへへへへ……。かわいい子どもたちが来たな。おいしそうなごちそうだ。いま、たべてやるからな。うへへへへ……。」

おばけのトラが、そんなことをいって、ぶきみにわらいました。その声が、ほらあなにこだまして、なんともいえないおそろしさです。

そして、おばけは、二メートルもあるような大きな口をがっとひらきました。

五人は、にげようとしても、じしゃくでひきつけられたように、どうしてもにげることができません。そして、いつのまにか、おばけのトラの口の前まですいよせられ、つぎつぎと、口の中へのまれてしまいました。

口の中には、まっかな大きなしたがうごめいていました。

五人は、そのしたの上にころがったまま、気をうしなったようになっていました。

それにしても、地のそこに、どうしてこんな大きなばけものがすんでいるのでしょう。ばけものにたべられた子どもたちは、これから、いったいどうなるのでしょうか。

Cette fois, c’était au tour du club des jeunes détectives de partir à la recherche du scarabée en rubis.

Selon la lettre qui disait :

«Le 25 mai à 15h20, entre par le sommet du grand cèdre. Prends garde au terrible gardien.»

Kobayashi, Yûko, Kimura, Inoue et Noro-chan, les cinq membres du groupe, se rendirent dans le champ du grand cèdre à Setagaya. Noro-chan, expert en escalade, grimpa jusqu’au sommet du grand cèdre, mais il n’y avait aucun trou où entrer. Il observa les alentours, puis, soudain, il montra du doigt l’ombre longue du cèdre sur le terrain et s’écria :

«C’est là-bas ! L’entrée est là-bas !»

En entendant cela, le chef Kobayashi comprit lui aussi :

«Mais oui, le “sommet” désigne le bout de l’ombre du cèdre !»

Ils attendirent que Noro-chan redescende de l’arbre, puis tous se rendirent au bout de l’ombre du cèdre. Là, de hautes herbes poussaient en abondance. Kobayashi s’avança dans les herbes pour chercher, et bientôt il appela tout le monde :

«Ah, il y a un trou ici ! Ça doit être l’entrée !»

C’était un trou étroit, d’environ soixante centimètres de diamètre. Il faisait tout noir à l’intérieur. Inoue et Kimura allumèrent leurs lampes de poche, et Inoue entra le premier dans le trou.

Le passage étroit ne faisait que trois mètres de long, puis il s’élargissait brusquement, et des marches de pierre descendaient vers le bas. On pouvait alors marcher debout.

Ayant descendu les marches, ils trouvèrent devant eux une grande porte de fer fermée. La lettre du professeur de magie disait : «Prends garde au terrible gardien.» Ils pensèrent que ce gardien effrayant les attendait sûrement derrière la porte, et leur cœur se mit à battre fort.

Mais ils ne pouvaient pas reculer maintenant.

Inoue saisit la poignée et poussa la porte. Elle n’était pas verrouillée et s’ouvrit dans un grincement sinistre.

Ils éclairèrent l’intérieur avec leurs lampes : il n’y avait rien, seulement un tunnel sombre qui s’enfonçait au loin.

Les cinq enfants, Inoue en tête, avancèrent prudemment dans l’obscurité. Noro-chan, le peureux, tremblait en suivant Kobayashi. Et comme Yûko était une fille, il fallait la protéger. Kobayashi prit la main de Noro-chan et celle de Yûko et il avança. Ils arrivèrent au bout d’un moment à un tournant dans le tunnel.

Ils le franchirent et s’arrêtèrent net, stupéfaits : juste devant eux, un monstre gigantesque était accroupi. Sa tête était jaune, rayée de larges bandes noires. Ses yeux, aussi grands que des bassines, brillaient dans l’obscurité.

Sa bouche immense, ornée de moustaches épaisses comme des cannes, laissait jaillir deux crocs blancs. C’était un monstre cent fois plus gros qu’un tigre. Sa tête effrayante emplissait tout le tunnel, son menton touchait le sol.

Un vent fétide et puissant souffla de quelque part.

«Hehehe… De gentils enfants sont venus. Quel délicieux festin. Je vais vous manger tout de suite. Hehehe…»

Le tigre-monstre dit cela en ricanant, et sa voix résonna dans le tunnel, glaçante.

Puis il ouvrit une gueule de deux mètres de large.

Les cinq enfants voulurent fuir, mais, comme attirés par un aimant, ils furent irrésistiblement aspirés vers la gueule du monstre et engloutis l’un après l’autre.

À l’intérieur de la bouche, une énorme langue rouge remuait.

Les cinq enfants, roulés sur cette langue, perdirent connaissance.

Mais pourquoi un monstre aussi énorme vit-il dans les profondeurs de la terre ? Et qu’adviendra-t-il des enfants dévorés par le monstre ?

小林くんと木村くんと、ユウ子ちゃんと井上くんと、ノロちゃんの五人は、ルビーのカブトムシをとりかえすために、世田谷区のさびしい原っぱの、ふしぎなほらあなへはいっていきました。

そのほらあなの中には、ふつうのトラの百ばいもある、おばけのトラがねそべっていて、大きな口へ、五人をのみこんでしまいました。

しばらくして気がついてみると、まだ、トラのしたの上にころがったままで、いぶくろの方へのみこまれていくようすもありません。井上くんは、しっかりにぎりしめていたかいちゅうでんとうで、おばけののどのおくをてらしてみました。

すると、このトラののどのおくには、しょくどうも、いぶくろも、なにもないことがわかりました。

くびだけのトラだったのです。もちろん、いきたトラではなくて、きかいじかけの作り物です。すいよせられたと思ったのは、どこかうしろの方から、大きなせんぷうきのようなもので、ふきつけられたのでしょう。

井上くんは、トラの口から外へ出ようとしましたが、もう口はとじられていて、どうしてもあけることができません。

しかたがないので、小林くんとそうだんして、おくの方へ行ってみることにしました。トラののどのおくは、いままでとおなじコンクリートのほらあなです。かいちゅうでんとうでてらしながら、そこをすすんでいきますと、ばったり行きどまりになってしまいました。

「あっ、ここにドアがあるよ。」

ひとりが、やっととおれるほどの小さいドアです。井上くんが、そのドアのとっ手をつかんでひっぱると、なんなくあきました。まるで、きんこのとびらのように、ひどくぶあつい、がんじょうな鉄のドアです。

五人は、その中へはいりました。すると、ふしぎなことに、そのおもいドアが、すうっと、ひとりでにしまってしまったではありませんか。

井上くんはおどろいて、もう一どあけようとしましたが、こんどは、いくらおしてもびくともしません。それにドアのうちがわには、とっ手もなにもなく、すべすべした鉄のいたです。

「おやっ。ここは、どこにも出口のないまるいへやだよ。」

それは、たたみ二じょうくらいの、いどのそこのようなまるいへやでした。

五人は、コンクリートのつつの中にとじこめられてしまったのです。かいちゅうでんとうでてんじょうをてらしてみると、まるいつつは、ずっと上の方へつづいています。まったくいどのそことおなじです。

「おや、あの音はなんだろう。」ノロちゃんが、おびえた声を出しました。

ほんとうに、へんな音がしています。とおくで、モーターがまわっているような音です。

そのとき、かいちゅうでんとうでてんじょうをてらしていた井上くんが、

「あっ、たいへんだっ。」

とさけんだので、みんなびっくりして、その方を見上げました。

じつにおそろしいことが、おこっていたのです。ごらんなさい。てんじょうから、鉄のふたのようなものが、じりじりとおりてくるではありませんか。

まるいつつのうちがわへ、ぴったりはまったあつい鉄のふたです。それが、しずかにおりてくるのです。

鉄のふたは、モーターの力で、すこしのくるいもなくおりてきます。ああ、もう手をのばせばとどくところまでおりてきました。

「みんな、手をのばして、力をあわせて、あれをささえるんだ。でないと、ぼくたち、おしつぶされてしまうよ。」

小林くんはそういって、まず、自分が両手を上げました。

みんなも、そのまねをして、両手を上げて、鉄のふたをおしもどそうとしました。しかし、それは、ひじょうにおもい鉄のかたまりらしく、五人の力では、とてもささえきれません。じりじり、じりじりと、おりてくるのです。それにつれて、ささえている手が、だんだんさがり、とうとう鉄のふたは、みんなのあたまにくっつくほどになりました。

もう、しゃがむほかはありません。そのつぎには、すわってしまいました。それでもまだ、鉄のふたはおりてくるのです。もう、すわっていることもできないようになり、みんなはあおむけにねころんで、両手と両足でささえようとしましたが、やっぱりだめです。なん百キロというおもさの鉄が、ねているかおのすぐそばまでおりてきました。

ユウ子ちゃんは、なきだしました。ノロちゃんもなきだしました。

「たすけてくれえ……。」

井上くんと木村くんが、かなしい声でさけびました。小林くんさえ、なきだしたくなるほどでした。

ああ、五人は、いったいどうなるのでしょう。

Kobayashi, Kimura, Yûko, Inoue et Noro-chan, les cinq enfants, étaient entrés dans l’étrange grotte du terrain vague de Setagaya pour récupérer le scarabée en rubis.

Dans cette grotte était couché un tigre monstrueux, cent fois plus grand qu’un tigre ordinaire, qui les avait avalés d’un seul coup.

Au bout d’un moment, ils reprirent conscience et se rendirent compte qu’ils étaient toujours allongés sur la langue du tigre et n’avaient pas été engloutis vers l’estomac. Inoue, tenant fermement sa lampe de poche, éclaira le fond de la gorge du monstre.

Il découvrit alors qu’il n’y avait ni œsophage ni estomac dans la gorge du tigre.

Ce n’était qu’une tête de tigre. Bien sûr, ce n’était pas un vrai tigre, mais une machine, un monstre mécanique. Ce qu’ils avaient pris pour une force d’aspiration était probablement un puissant ventilateur soufflant depuis l’arrière.

Inoue voulut sortir par la bouche du tigre, mais la gueule était déjà refermée, impossible à ouvrir.

N’ayant pas le choix, Kobayashi et lui décidèrent d’explorer l’arrière. Le fond de la gorge du tigre était un tunnel de béton, comme le reste de la grotte. Ils avancèrent à la lumière de leur lampe, jusqu’à se retrouver face à un cul-de-sac.

«Oh, il y a une porte ici !»

C’était une petite porte, juste assez grande pour laisser passer une personne. Inoue saisit la poignée et tira : elle s’ouvrit sans difficulté. C’était une porte de fer très épaisse et solide, comme celle d’un coffre-fort.

Les cinq enfants entrèrent. Alors, chose étrange, la lourde porte se referma d’elle-même, en silence.

Inoue, surpris, essaya de la rouvrir, mais cette fois, il eut beau pousser, elle ne bougea pas d’un millimètre. De plus, il n’y avait ni poignée ni rien du côté intérieur, seulement une surface lisse en fer.

«Tiens, c’est une pièce ronde sans aucune sortie !»

C’était une pièce circulaire, d’environ deux tatamis, qui ressemblait au fond d’un puits.

Les cinq enfants étaient enfermés dans un cylindre de béton. En éclairant le plafond avec leur lampe, ils virent que le tube rond montait très haut, exactement comme un puits.

«Oh, c’est quoi ce bruit ?» demanda Noro-chan d’une voix tremblante.

En effet, un étrange bruit se faisait entendre, comme celui d’un moteur qui tourne au loin.

À ce moment-là, Inoue, qui éclairait le plafond avec sa lamze, s’écria :

«Oh, c’est terrible !»

Tous levèrent les yeux, effrayés.

Une chose effrayante était en train de se produire. Regardez : du plafond, un couvercle de fer descendait lentement, comme une trappe.

C’était un épais couvercle de fer, parfaitement ajusté à l’intérieur du cylindre, qui descendait doucement.

Le couvercle, mû par un moteur, descendait sans le moindre décalage. Il était déjà à portée de main.

«Tout le monde, levez les mains et essayez de le retenir ensemble ! Sinon, on va être écrasés !»

Kobayashi dit cela et leva les bras.

Les autres l’imitèrent, levant les mains pour tenter de repousser le couvercle. Mais c’était un énorme bloc de fer, et la force des cinq enfants ne suffisait pas. Le couvercle descendait inexorablement. Peu à peu, leurs bras cédaient, et le couvercle toucha bientôt leurs têtes.

Ils n’eurent d’autre choix que de s’accroupir, puis de s’asseoir. Mais le couvercle continuait à descendre. Bientôt, ils ne purent même plus rester assis : ils s’allongèrent sur le dos, essayant de le retenir de toutes leurs forces avec leurs mains et leurs pieds, mais rien n’y fit. Le lourd couvercle de fer, pesant des centaines de kilos, descendait jusqu’à frôler leurs visages.

Yûko se mit à pleurer. Noro-chan aussi.

«À l’aide…» sanglotèrent Inoue et Kimura. Même Kobayashi avait envie de pleurer.

Ah, que va-t-il advenir des cinq enfants ?

少年たんていだんの小林だんちょうと、だんいんの木村くんと、ユウ子ちゃんと、井上くんと、ノロちゃんの五人が、まほうはかせのあんごうをといて、世田谷区のはずれのさびしい原っぱにあるほらあなへはいっていくと、コンクリートのまるいへやにとじこめられ、上からおもい鉄のふたが、じりじりとさがってきました。鉄のふたにはすきまがないから、そのままさがってきたらたいへんです。

みんな、おしつぶされてしんでしまうにきまっているのです。おくびょうもののノロちゃんや、女の子のユウ子ちゃんは、わあわあとなきだしてしまいました。

しかし、だんちょうの小林くんは、しっかりしていました。いそがしくあたまをはたらかせて、どうしたらみんながたすかるかということを、いっしょうけんめいに考えました。

「まほうはかせは、人ごろしなんかするはずがない。こんなおそろしい目にあわせて、ぼくたちのゆうきとちえをためしているんだ。」

それなら、ちえをはたらかせたら、どこかににげ道があるのかもしれません。

そこで小林くんは、かいちゅうでんとうをもったまま、まるいへやのまわりを、ぐるっとはいまわり、コンクリートのかべをしらべてみました。

すると、コンクリートのかべに、六十センチ四方ほどの、四かくな切れ目がついているのを見つけました。

「これが、ひみつのかくし戸かもしれないぞっ。」

力いっぱいおしてみましたが、びくともしません。

「どこかに、これをひらくしかけがあるにちがいない。」

小林くんはすばやく、そのへんを見まわしました。

四かくな切れ目から、すこしはなれたかべの上の方に、コンクリートが小さくふくらんだところがあります。よくしらべてみると、そのぼっちは、コンクリート色にぬった金物であることがわかりました。

「ああ、そうだ。鉄のふたが下までおりたら、ぼくたちがしんでしまうから、下までおりないうちに、にげ出せるしかけになっているのだ。」

「鉄のふたが、このぼっちのところをとおると、ぼっちがおされる。そうすると、ひみつの戸が外へひらくようになっているのだ。」

小林くんは、とっさに、そこへ気がつきました。

「それなら、手でおしたって、ひらくかもしれないぞ。」

そこで、ぼっちにおやゆびをあて、その上に、もう一方の手をかさねて、力いっぱいおしてみました。

ぼっちは、なかなか動きません。たいへんな力がいるのです。小林くんは、からだじゅう、あせびっしょりになりました。でも、がまんをして、うんうんおしつづけていますと、カタンという音がして、四かくな切れ目が、すうっとむこうへひらきました。小林くんのちえとゆうきが、せいこうしたのです。

そこは、にんげんひとりがやっとはってとおれるほどのまっくらなあなでした。小林くんは、みんなをよんで、そのあなへはいこみました。きみがわるいけれども、じっとしていたら、鉄のふたにおしつぶされてしまうだけですから、このあなへにげるほかはないのです。

そのまっくらできゅうくつなあなは、十メートルもつづいていました。

やがて、あたりがきゅうにひろくなりました。外へ出たのでしょうか。いや、そうではありません。まだまっくらです。やはり、地のそこの一室なのです。

たち上がって、かいちゅうでんとうでてらしてみますと、それは、二十じょうもあるような、コンクリートのへやでした。みんなが、そのへやにはいったとき、どこからか、ぎょっとするような声がひびいてきました。

「わははは……。かんしん、かんしん。とうとう、あぶないところをぬけ出したね。だが、まだこれでおしまいじゃないよ。わしの手紙には、『おそろしい番人に注意せよ。』と書いてあった。だい一は大トラ、だい二は鉄のふた、さて、だい三の番人はなんだろうね。おしまいほどおそろしいやつがひかえているからね。ようじんするがいいよ。」

まほうはかせの声です。どこから聞えてくるのかわかりません。きっとてんじょうのすみに、ラウド=スピーカーでもしかけてあるのでしょう。

五人は一かたまりになって、おたがいのからだをだきあってじっとしていました。ノロちゃんのからだが、がたがたふるえているのがよくわかります。

「あれっ、なんだろう。なにか動いているよ。」

木村くんが、むこうのゆかをゆびさしてさけびました。かいちゅうでんとうの光が、さっとその方をてらします。

するとそこに、なんだかきみのわるいことがおこっていました。

地のそこから、みょうなものがむくむくとあらわれてきたのです。

まるいあたまのようなものが出てきました。

それが、見る見る大きくなります。あなもなにもないコンクリートのゆかから、むくむくと上がってくるのです。子どもくらいの大きさになりました。おとなくらいになりました。おとなのばいになりました。おとなの三ばいになりました。大きなあたまの、まっさおなからだの、のっぺらぼうなかいぶつです。それが、きりもなく大きくなっていくのです。

Le chef du club des jeunes détectives, Kobayashi, et ses membres Kimura, Yūko, Inoue et Noro, ils sont cinq à avoir résolu le code du professeur Magicien. Ils pénètrent dans une grotte isolée, située sur un terrain vague à la lisière de Setagaya, mais se retrouvent enfermés dans une pièce ronde en béton. Un lourd couvercle de fer commence alors à descendre lentement du plafond. Comme il n’y a aucun interstice, ce sera la catastrophe s’il descend jusqu’au bout: ils seront tous écrasés et mourront à coup sûr. Noro, le peureux, et Yūko, la fille du groupe, éclatent en sanglots.

Mais le chef Kobayashi garde son sang-froid. Il réfléchit intensément pour trouver un moyen de sauver tout le monde.

«Le professeur Magicien ne sera jamais un meurtrier. S’il nous a mis dans une telle situation, c’est pour tester notre courage et notre intelligence.»

S’il s’agit d’un test d’ingéniosité, il doit bien y avoir une issue quelque part.

Kobayashi, muni de sa lampe de poche, fait alors le tour de la pièce, inspectant les murs de béton. Il découvre alors, sur l’un des murs, une découpe carrée d’environ soixante centimètres de côté.

«Ça doit être une porte secrète !»

Il pousse de toutes ses forces, mais rien ne bouge.

«Il doit y avoir quelque part un mécanisme pour l’ouvrir.»

Il observe alors les alentours. Il remarque un peu plus haut sur le mur une petite bosse dans le béton, qui s’avère être une pièce métallique peinte couleur béton.

«Ah, je comprends ! Si le couvercle descend jusqu’en bas, nous serons écrasés. Il doit donc y avoir un mécanisme pour s’échapper avant que cela n’arrive.

Quand le couvercle de fer passe au niveau de cette bosse, elle est pressée, ce qui ouvre la porte secrète vers l’extérieur.»

Kobayashi comprend tout de suite.

«Peut-être que si je la presse à la main, la porte s’ouvrira.»

Il appuie son pouce sur la bosse, pose l’autre main dessus, et pousse de toutes ses forces. La bosse ne bouge pas facilement ; il faut une force considérable. Kobayashi est bientôt en sueur, mais il persévère. Finalement, un déclic se fait entendre, et la découpe carrée s’ouvre doucement vers l’extérieur. Grâce à son intelligence et à son courage, Kobayashi a réussi.

Là s’ouvre devant eux un tunnel sombre, à peine assez large pour qu’un humain puisse ramper. Kobayashi appelle tout le monde à le suivre. Même si c’est effrayant, rester là, c’est se faire écraser par le couvercle de fer ; il n’y a donc pas d’autre choix que de fuir par ce tunnel.

Ce passage sombre et étroit s’étend sur une dizaine de mètres.

Bientôt, l’espace s’élargit brusquement. Sont-ils dehors ? Non, il fait encore noir. Ils sont toujours dans une pièce souterraine.

Ils se lèvent et éclairent avec la lampe de poche : c’est une pièce en béton d’environ vingt tatamis. À peine sont-ils entrés qu’une voix étrange retentit de quelque part.

«Wahaha… Bravo, bravo. Vous avez réussi à échapper au danger. Mais ce n’est pas fini. Dans ma lettre, j’avais écrit : “Attention au terrible gardien.” Le premier était le grand tigre, le deuxième le couvercle de fer, mais quel sera le troisième gardien ? Plus on approche de la fin, plus il sera effrayant. Soyez sur vos gardes !»

C’est la voix du professeur Magicien. On ne sait pas d’où elle vient, sans doute d’un haut-parleur caché dans un coin du plafond.

Les cinq enfants restent immobiles, serrés les uns contre les autres. On sent bien que Noro tremble de tout son corps.

«Hé, qu’est-ce que c’est ? Il y a quelque chose qui bouge !»

Kimura pointe du doigt le sol de l’autre côté de la pièce. Le faisceau de la lampe éclaire alors la scène.

Quelque chose de terrifiant est en train de se produire.

Du sol, une étrange forme commence à émerger.

Une sorte de tête ronde apparaît, et elle grossit à vue d’œil. Du sol de béton, sans ouverture, la chose monte lentement. Elle atteint la taille d’un enfant, puis d’un adulte, puis deux, puis trois fois la taille d’un adulte. C’est un monstre à grosse tête, au corps bleu pâle, sans visage, et il ne cesse de grandir.

10

小林くんと、木村くんと、ユウ子ちゃんと、井上くんと、ノロちゃんの五人は、ルビーのカブトムシをとりかえすために、まほうはかせのすみかのちか室へはいっていって、いろいろなおそろしいめにあいました。ちか室には広いへやがあって、五人がそこへはいると、へやのまん中に、むくむくとみょうなかいぶつがあらわれました。

たまごに目と口をつけたような、おかしなやつです。それが、見るまにだんだん大きくなり、おとなの三ばいもあるような大にゅうどうになってしまいました。そして、

「わははははは……。」

と、かみなりのようなわらい声が聞えました。

みんなは、思わずもと来た方へにげだしましたが、せまい入口にはいこもうとして、ふと、うしろを見ますと、おやっ、あのかいぶつは、どこへ行ったのか、かげも形もなくなっていました。かいちゅうでんとうでよくしらべてみましたが、へやは、まったくからっぽで、なにもないのです。

四方のかべはかたいコンクリートで、どこにも出口はありません。

みんなは、いよいよきみがわるくなってきました。

「へんだなあ。あいつ、けむりのようにきえてしまったよ。」

ノロちゃんが、とんきょうな声でいいました。

「あっ、ごらん。なんだか、動いてる。」

またしても、じめんから、ぶきみなものがわき出してきました。まっさおなものです。それが、かおからかた・はら・こしとせり出して、おとなぐらいの大きさになりました。

「あっ、せいどうのまじんだ。」

小林くんがさけびました。ずっと前に、少年たんていだんがたたかった、あのおそろしい、せいどうのまじんと、そっくりなのです。

せいどうでできたような、青いやつです。耳までさけた口で、にやにやわらっています。それが見る見る大きくなって、やっぱりおとなの三ばいほどになりました。あたまがてんじょうにつかえています。

「ギリリリリ、ギリリリリ……。」

はぐるまの音がします。せいどうのまじんの中に、はぐるまがしかけてあるのでしょうか。

「わはははは……。ちんぴらども、よく来たな。きみたちのさがしていた赤いカブトムシは、このわしが持っている。ほら、ここにあるよ。」

まっさおなきょじんは、おそろしい声でそういうと、耳までさけた口をぱっくりあけました。

三日月がたの、まっ黒なほらあなのような口です。

その口から、ぺろぺろと赤いしたを出しました。そのしたの上に、まっかなカブトムシが乗っているではありませんか。

せいどうのまじんは、口の中に、ルビーのカブトムシをかくしていたのです。少年たちはそれを見ると、思わず、「あっ。」とさけびました。しかし、あい手はおそろしいかいぶつです。とりかえすことは、とてもできそうにありません。

「わははは……。これがほしくないのかね。おくびょうなちんぴらどもだな。くやしかったら、わしのかおまでのぼってきてみろ。そして、わしの口の中から、これをとり出せばいいのだ。わはははは……。そのゆうきが、きみたちにあるかね。」

せいどうのまじんは、少年たちをばかにしたように、大きなからだをゆすってわらうのでした。

「ちくしょう。みんな来たまえ。」

おとうさんから、けんどうをならっている、井上一郎くんはそうさけぶと、いきなり、かいぶつの右の足にしがみついていきました。

あいては、おとなの三ばいもあるきょじんです。まるでこれは、すもうとりの足に赤んぼうがしがみついているようです。

そのとき、ガラガラガラッという、おそろしい音がして、あたりが、ぽっと明るくなりました。やみになれたみんなの目には、まぶしくて、目をあけていられないほどの明るさです。

いったい、なにごとが起ったのでしょう。やっと目を開いてみますと、ふしぎふしぎ、ちか室のてんじょうがなくなっているではありませんか。

てんじょうがきかいじかけで、両方へ開くようになっていたのです。上には、青空が見えています。たいようの光が、さんさんとあたりにかがやいています。

「あっ、たいへんだ。井上くんが……。」

小林くんが、びっくりしてさけびました。ほんとうに、たいへんなことが起っていたのです。

ごらんなさい。せいどうのまじんのからだが、すうっとちゅうにういたかと思うと、そのまま、ふわふわ空へまい上がっています。足にしがみついた井上くんも、いっしょにつれたままです。

これも、まほうはかせのまほうでしょうか。

それにしても、これから、いったいどんなことが起るのでしょう。

Kobayashi, Kimura, Yūko, Inoue et Noro, les cinq membres, sont entrés dans la chambre souterraine du repaire du professeur Magicien pour récupérer le scarabée-rubis, et ils ont affronté toutes sortes de dangers. Dans la pièce souterraine, il y avait une grande salle, et lorsque les cinq y sont entrés, une étrange créature a surgi au centre de la pièce.

C’était un drôle de monstre, comme un œuf avec des yeux et une bouche. Mais il s’est mis à grandir à vue d’œil, jusqu’à devenir un géant trois fois plus grand qu’un adulte.

«Wahahahaha…»

Un rire de tonnerre a retenti.

Pris de panique, ils se sont tous précipités vers la sortie par laquelle ils étaient venus, mais en se retournant, surprise : le monstre avait disparu sans laisser trace. Ils ont fouillé la pièce à la lampe de poche, mais elle était complètement vide, sans rien ni personne.

Les murs de béton étaient solides, sans aucune issue.

Tous commençaient à être vraiment inquiets.

«C’est bizarre… Il s’est volatilisé comme de la fumée,» fit remarquer Noro d’une voix aiguë.

«Regardez ! Quelque chose bouge encore là-bas !»

À nouveau, une chose étrange et inquiétante a émergé du sol. C’était d’un bleu livide. Sa tête, ses épaules, son torse, puis sa taille sont sortis du sol, prenant la taille d’un adulte.

«Ah, c’est le démon de bronze !» s’écria Kobayashi. C’était exactement le même terrifiant démon de bronze que le club des jeunes détectives avait affronté autrefois.

C’était une créature bleue, comme faite de bronze. Sa bouche, fendue jusqu’aux oreilles, esquissait un sourire narquois. Elle grandissait encore, atteignant bientôt trois fois la taille d’un homme, sa tête touchait le plafond.

«Grrrr… Grrrr…»

On entendait le bruit de rouages. Peut-être y avait-il un mécanisme à l’intérieur du démon de bronze.

«Wahahaha… Petits vauriens, vous voilà enfin. Le scarabée rouge que vous cherchiez, c’est moi qui l’ai. Regardez, il est ici.»

Le géant bleu, d’une voix effrayante, ouvrit alors grand la bouche, fendue jusqu’aux oreilles.

Sa bouche, noire comme un croissant de lune, était béante.

De cette bouche, il tira une langue rouge sur laquelle se trouvait le fameux scarabée écarlate.

Le démon de bronze avait caché le scarabée-rubis dans sa bouche.

À cette vue, les enfants poussèrent un cri de surprise. Mais face à un tel monstre, impossible de le récupérer.

«Wahaha… Vous n’en voulez pas ? Vous êtes de vrais froussards. Si vous en avez le courage, grimpez jusqu’à mon visage et venez le prendre dans ma bouche ! Wahahaha… En avez-vous le cran ?»

Le démon de bronze se moquait d’eux, secouant son immense corps.

«Mince, allons-y tous !»

Ichirō Inoue, qui apprenait le kendo avec son père, cria cela et se jeta soudain sur la jambe droite du monstre.

Mais l’adversaire était un géant trois fois plus grand qu’un adulte : c’était comme un bébé agrippé à la jambe d’un lutteur de sumo.

À ce moment-là, un bruit effrayant retentit, et tout s’illumina d’un coup. Pour leurs yeux habitués à l’obscurité, c’était aveuglant.

Que se passait-il donc ? Lorsqu’ils réussirent à ouvrir les yeux, ô surprise : le plafond de la pièce avait disparu !

Le plafond était en fait un mécanisme qui s’ouvrait sur les côtés. Au-dessus, le ciel bleu apparaissait, baigné de la lumière éclatante du soleil.

«Oh non, Inoue !» s’écria Kobayashi, stupéfait. Il se passait vraiment quelque chose de grave.

Regardez : le corps du démon de bronze s’est élevé dans les airs, il flotte doucement vers le ciel, emportant Inoue toujours accroché à sa jambe.

Était-ce encore un tour de magie du professeur Magicien ?

Quoi qu’il en soit, qu’allait-il bien pouvoir se passer à présent ?

11

ちか室のてんじょうが大きく開いて、おとなの三ばいもあるせいどうのまじんが、ふわふわとちゅうにうき、そのまま空の方へまい上がっていきました。

まじんの足にしがみついていた井上一郎くんも、いっしょに、空へまい上がっていくのです。

「おうい、井上君、手をはなせよ。そして、下へとびおりるんだっ。」

下から、小林くんが、大声でさけびました。

まじんの足は、ちか室のゆかから、もう三メートルもうき上がっていましたが、井上くんは思い切って手をはなし、ぱっととびおりました。

そして、コンクリートのゆかにしりもちをついて、かおをしかめています。

「あいつ、赤いカブトムシを口に入れたまま、とんでいってしまったよ。早く追っかけなけりゃあ。」

「よしっ。なわばしごだっ。」

小林くんはそうさけぶと、おなかのシャツの下にまきつけていた、じょうぶなきぬひものなわばしごをするするとほどいて、その一方のはしについている鉄のかぎを、開いたてんじょうへ投げ上げました。

なん度もしくじったあとで、やっとそのかぎが、てんじょうのあなのふちにひっかかったのです。

しょうねんたんていだんのなわばしごは、一本のきぬひもです。それに三十センチごとに大きなむすび玉がついていて、そこへ足のゆびをかけてのぼるのです。

「じゃあ、ぼくがさきにのぼるから、みんな、あとから来るんだよ。」

小林くんはそういって、きぬひものなわばしごをぐんぐんのぼっていくのでした。

そのあとから、みんなのぼりました。ユウ子ちゃんは女の子ですから、井上くんたちが上から手をのばして、引き上げてあげました。

あなの外へ出ると、そこは、草ぼうぼうの原っぱでした。さいしょにのぼった小林くんが、むこうへ走っていくすがたが小さく見えます。いったい、どこへ行こうとするのでしょう。

空を見上げると、せいどうのまじんは、ふうせんのように、高く高くとんでいきます。

「わあ、よくとぶねえ。もう、あんなに小さくなっちゃった。」

ノロちゃんがさけびました。

あとでわかったのですが、せいどうのまじんはあついビニールでできていて、中にかるいガスを入れたものでした。つまり、ふうせんだったのです。

ちか室のゆかに小さなあながあいていて、その下に、また、小べやがあったのです。そこにまほうはかせがかくれていて、あなからビニールのまじんをゆかの上におし出しながら、ポンプでガスをふきこんだのです。

ガスがはいるにしたがって、ビニールのまじんはふくれあがり、しまいには、おとなの三ばいもあるきょじんになってしまったのでした。

せいどうのまじんがものをいったのは、ゆかのあなの下から、まほうはかせが、声をかえてしゃべっていたのです。

まじんが口を開いたのは、あごに細い糸がついていて、それを下からひっぱると口があき、糸をはなすと、口がしまるようになっていたのです。赤いカブトムシは、したにくくりつけてあったのでしょう。

まじんが出る前にあらわれた、たまごのおばけみたいなものも、やっぱりビニールでできていて、一度ガスを入れてふくらまし、みんながにげ出している間に、きゅうにそのガスをぬいたので、ビニールはぺちゃんこになり、ゆかのあなの下へかくれてしまったのです。

ちか室が暗いので、小林くんたちは、その小さなあなのしかけがよく見えなかったのでした。

空のせいどうのまじんは、だんだんすがたを小さくしながら、東の方へとんでいきます。東の方へ風がふいているのでしょう。まじんは、赤いカブトムシを口に入れたまま、その風に送られて、どことも知れずとびさっていきます。

「あっ、もう、見えなくなってしまった。」

木村くんがさけびました。

そのとき、原っぱのむこうから、小林くんがかけもどってくるのが見えました。

「小林さあん、どこへ行ってたの。あいつは、赤いカブトムシを口に入れたまま空へのぼって、もう、見えなくなってしまったよ。」

井上くんがよびかけますと、みんなのそばへかけよってきた小林くんが、いきをはずませて答えました。

「明智先生に、でんわをかけたんだよ。

明智先生に、せいどうのまじんのことを知らせたらね、先生は、すぐに新聞社へでんわしてから、自動車で、あるところへとんでいってくださったんだよ。そして、いまにむこうの空から、みかたがとんでくるんだよ。」

小林くんが、東京の町の方の空をゆびさしました。いったい、空からなにがやって来るのでしょうか。

三十分あまりも待ったでしょうか。もう夕ぐれ近いむこうの空に、ぽつんと、黒いてんのようなものがあらわれました。

「あっ、来た、来た。あれだよ。」

小林くんがうれしそうにいいました。

てんのようなものは、だんだん大きくなって、こちらへ近づいてきます。それは、一台のヘリコプターでした。みなさん、しょうねんたんていだんのみかたというのは、このヘリコプターだったのです。

Le plafond de la chambre souterraine s’ouvrit largement, et le démon de bronze, trois fois plus grand qu’un adulte, s’éleva doucement dans les airs, montant ainsi vers le ciel.

Ichirō Inoue, qui s’accrochait à la jambe du démon, s’envola avec lui.

«Hé, Inoue ! Lâche prise et saute !»

D’en bas, Kobayashi cria de toutes ses forces.

La jambe du démon flottait déjà à trois mètres du sol, mais Inoue prit son courage à deux mains, lâcha prise et sauta. Il atterrit sur le sol de béton, tomba sur les fesses et grimaça de douleur.

«Il est parti dans le ciel avec le scarabée rouge dans la bouche. Il faut vite le poursuivre !»

«D’accord, une échelle de corde !»

Aussitôt, Kobayashi détacha la solide corde de soie qu’il portait enroulée sous sa chemise et lança le crochet métallique fixé à une extrémité vers l’ouverture du plafond.

Après plusieurs essais, le crochet finit par s’accrocher au bord du trou.

L’échelle de corde du club des jeunes détectives était une simple corde de soie, avec de gros nœuds tous les trente centimètres, sur lesquels on pouvait poser les pieds pour grimper.

«J’y vais le premier, suivez-moi tous !»

Kobayashi s’élança le premier sur l’échelle de corde, suivi par les autres. Comme Yūko était une fille, Inoue et les autres lui tendirent la main d’en haut pour l’aider à monter.

En sortant du trou, ils se retrouvèrent sur un terrain vague envahi d’herbes hautes. Kobayashi, qui était monté le premier, courait déjà au loin. Où allait-il donc ?

En levant les yeux, ils virent le démon de bronze s’envoler toujours plus haut, tel un ballon.

«Waouh, il vole bien ! Il est déjà tout petit !» s’écria Noro.

Plus tard, ils apprirent que le démon de bronze était en fait fait d’un épais vinyle rempli de gaz léger, autrement dit, c’était un ballon.

Il y avait dans le sol de la chambre souterraine un petit trou qui menait à une autre petite pièce où le professeur Magicien s’était caché. De là, il avait poussé le démon de vinyle dans la pièce, tout en le gonflant au gaz avec une pompe.

À mesure que le gaz entrait, le démon gonflait jusqu’à devenir un géant trois fois plus grand qu’un adulte.

Quand le démon parlait, c’était le professeur Magicien qui, depuis la pièce en dessous, changeait sa voix.

La bouche du démon s’ouvrait grâce à un fil attaché à sa mâchoire, tiré d’en bas pour ouvrir la bouche, relâché pour la fermer. Le scarabée rouge était sans doute attaché à la langue.

Le monstre en forme d’œuf apparu avant le démon était lui aussi en vinyle : il avait été gonflé une première fois, puis, pendant que les enfants fuyaient, le gaz avait été évacué d’un coup, le vinyle s’était aplati et caché sous le trou du sol.

Comme la pièce était sombre, les enfants n’avaient pas vu ce mécanisme.

Dans le ciel, le démon de bronze, de plus en plus petit, s’envolait vers l’est, emporté par le vent, le scarabée rouge dans la bouche, disparaissant on ne sait où.

«Ah, on ne le voit plus !» s’écria Kimura.

À ce moment, ils virent Kobayashi revenir en courant de l’autre côté du terrain.

«Kobayashi, où étais-tu ? Le démon est parti dans le ciel avec le scarabée rouge dans la bouche, on ne le voit plus !»

Inoue l’appela, et Kobayashi, essoufflé, répondit en rejoignant le groupe :

«Je suis allé téléphoner à l’inspecteur Akechi.

Quand je lui ai parlé du démon de bronze, il a tout de suite appelé le journal, puis il est parti en voiture vers un endroit précis. Et maintenant, un allié va venir du ciel.»

Kobayashi montra le ciel du côté de Tokyo. Qu’est-ce qui allait donc arriver par les airs ?

Ils attendirent plus de trente minutes. Dans le ciel, vers le soir, un petit point noir apparut.

«Ça y est, il arrive ! C’est lui !» s’écria Kobayashi, tout joyeux.

Le point grossit peu à peu en s’approchant. C’était un hélicoptère.

Eh oui, l’allié du club des jeunes détectives, c’était cet hélicoptère.

12

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しょうねんたんていだんのおうえんにやって来たヘリコプターは、強い風をまき起しながら、原っぱのまん中へちゃくりくしました。

「あっ、明智先生だっ。」

小林だんちょうがさけんで、その方へかけ出しました。

ヘリコプターの、すきとおったそうじゅう室のとびらが開いて、明智たんていがおりてきました。

めいたんていは、ひこうきでもヘリコプターでも、そうじゅうできるのです。

明智たんていは、小林くんのでんわをきくと、いそいで新聞社とうちあわせ、新聞社のヘリコプターを、自分でそうじゅうして、とんできたのです。

みんなは明智たんていのまわりをとりかこんで、ちか室でおそろしいめにあったことを、口々に話すのでした。

「よし、それじゃあ、このヘリコプターで、せいどうのまじんを追いかけるんだ。」

明智たんていは、みんなにさしずをしました。

「小林くんと井上くんとふたりだけ、ぼくといっしょに乗りたまえ。それいじょうは乗れない。のこった人は、みんなうちへ帰って、待っていたまえ。きっと、せいどうのまじんをとらえてみせるよ。そして、赤いカブトムシをとりかえしてあげるよ。」

明智たんていと、小林くん・井上くんのふたりがヘリコプターに乗りこみました。

ヘリコプターはまた、おそろしい風を起して、とび上がっていきます。原っぱにのこったノロちゃんと木村くんと、ユウ子ちゃんは、手をふって、それを見送りました。

小林くんと井上くんは、はじめてヘリコプターに乗ったのです。うちゅうりょこうにでも出かけるような気持でした。

ヘリコプターは、高い空を、せいどうのまじんがとびさった東の方へ進んでいきます。

ふりむくと西の空は、まっかな夕やけでした。やがて、日がくれるのです。そのときのよういに、そうじゅう室には、小がたのサーチライトがそなえつけてあります。

せいどうのまじんは、風にはこばれていったのですから、風のふく方へ追いかければよいのです。こちらには風のほかに、プロペラの力があります。きっと、追いつくことができるでしょう。

やがて、夕やけもきえ、見る見るあたりが暗くなってきました。空にはいちめんに、星がまたたき始めました。ちじょうには、いなかの町のでんとうが、これも星のように、ちらほら見えています。上にも星、下にも星、ほんとうにうちゅうりょこうです。

「あっ、先生。あそこに、なんだかとんでいますよ。」

小林くんのさけび声に、ぱっとサーチライトがてんじられました。その光のとどかないほどむこうの空に、なんだか黒っぽいものがふわふわとただよっています。ヘリコプターは、その方へしんろをむけました。

「あっ、やっぱりそうだ。にんげんの形をしている。せいどうのまじんですよ。」

やがてそれが、サーチライトの光の中へはいってきました。たしかに、せいどうのまじんのふうせんです。

「小林くん、これで、あいつのからだをうつんだ。いまに、あいつのすぐよこを通るからね。そのとき、ドアをすこしあけて、右手を出して、うつんだ。」

明智たんていはそういって、小林くんにピストルをわたしました。小林くんはたんていじょしゅですから、ピストルのうちかたは知っています。

明智たんていは、ヘリコプターをうまくそうじゅうして、せいどうのまじんのすぐよこに近づき、そくどをおとしてならんでとぶようにしました。小林くんはいわれたとおり、ドアのすきまから手を出して、まじんのからだにピストルをはっしゃしました。

すぐ目の前をふわふわとんでいたまじんが、ぐらっとゆれました。ピストルのたまがめいちゅうしたのです。つづいて、二はつ、三ぱつ……。

そのたびに、まじんのふうせんは、ぐらっぐらっとゆれるのです。そして、たまのあなから、シューッと、ガスがぬけていくのです。

「よしっ。それでいい。こんどはヘリコプターで、あいつをおさえつけるんだ。」

明智たんていは、ヘリコプターをまじんの前にもっていって、そのままぐっとこうどをさげました。

すると、それにおされて、まじんはよこたおしになり、ヘリコプターのそこにぴったりくっついてしまいました。

「よしっ。このままで、どこかの原っぱへちゃくりくしよう。もう、にがしっこないよ。」

サーチライトを下へむけると、手ごろなばしょを見つけて、たんていはぐんぐんヘリコプターをさげました。そして、まっ暗な畑の中へちゃくりくしたのです。

三人は、ヘリコプターからとび出しました。そして、かいちゅうでんとうをてらして、きたいの下をのぞきました。ビニールのまじんのふうせんは、ガスがぬけ、ぺっちゃんこになって、そこにひっかかっていました。

ひきずり出して口の中をしらべますと、したの上に、赤いルビーのカブトムシが、ちゃんとくっついていたではありませんか。とうとうとりもどすことができたのです。

あくる日、明智たんていじむしょの小林くんのところへ、でんわがかかってきました。まほうはかせからでした。

「きみたちの勝ちだよ。ルビーは、きみたちのものだ。いろいろ苦しめてすまなかったね。だが、あれは、きみたちのちえとゆうきをためすためだったのだよ……。しょうねんたんていだん、おめでとう。明智先生によろしく。」

小林くんはじゅわきをおくと、よこにたって聞いていた明智先生とかおを見あわせて、にっこりわらうのでした。

L’hélicoptère venu au secours du club des jeunes détectives atterrit au milieu du terrain vague, soulevant un fort courant d’air.

«Ah, c’est l’inspecteur Akechi !» s’écria le chef Kobayashi, courant dans sa direction.

La porte transparente du cockpit s’ouvrit, et le détective Akechi descendit de l’appareil. Ce célèbre détective sait piloter aussi bien un avion qu’un hélicoptère. Après avoir reçu l’appel de Kobayashi, il s’était rapidement mis d’accord avec le journal, puis avait pris les commandes de l’hélicoptère de la rédaction pour venir.

Tous entourèrent l’inspecteur Akechi et commencèrent à lui raconter, chacun à sa façon, les terribles aventures vécues dans la chambre souterraine.

«Bien, alors, nous allons poursuivre le démon de bronze avec cet hélicoptère,» ordonna Akechi.

«Kobayashi et Inoue, vous venez avec moi. Les autres, rentrez chez vous et attendez. Je vous promets que nous capturerons le démon de bronze et que nous vous rendrons le scarabée rouge.»

Akechi, Kobayashi et Inoue montèrent dans l’hélicoptère. L’appareil s’éleva à nouveau dans un violent souffle de vent. Noro, Kimura et Yūko, restés sur le terrain, leur firent signe de la main pour les saluer.

C’était la première fois que Kobayashi et Inoue montaient dans un hélicoptère. Ils avaient l’impression de partir pour un voyage dans l’espace.

L’hélicoptère prit de la hauteur et se dirigea vers l’est, là où le démon de bronze avait été emporté par le vent. En se retournant, ils virent à l’ouest le ciel rougeoyant du soleil couchant. Bientôt, la nuit tomberait. Par précaution, le cockpit était équipé d’un projecteur.

Comme le démon de bronze était emporté par le vent, il suffisait de suivre la même direction. En plus du vent, ils avaient la puissance des hélices ; ils pourraient sûrement le rattraper.

Le soleil se coucha et l’obscurité tomba rapidement. Le ciel se couvrit d’étoiles scintillantes. Sur la terre, les lumières des villages brillaient aussi , comme des étoiles. Des étoiles en haut, des étoiles en bas : c’était vraiment comme un voyage dans l’espace.

«Regardez, monsieur ! Il y a quelque chose qui vole là-bas !»

Au cri de Kobayashi, le projecteur fut braqué dans cette direction. Au loin, dans le ciel, une forme sombre flottait. L’hélicoptère se dirigea vers elle.

«Oui, c’est bien ça ! C’est une forme humaine, c’est le démon de bronze !»

Bientôt, la forme entra dans le faisceau du projecteur : c’était bien le ballon du démon de bronze.

«Kobayashi, tire-lui dessus. Nous allons bientôt passer juste à côté. À ce moment-là, ouvre un peu la porte, tends le bras et vise-le.»

Akechi remit un pistolet à Kobayashi, qui, en tant qu’assistant détective, savait s’en servir.

Akechi manœuvra l’hélicoptère pour voler tout près du démon de bronze, ralentit et se mit à sa hauteur. Kobayashi, comme on lui avait dit, passa la main par la porte entrouverte et tira sur le corps du démon.

Le démon, qui flottait juste devant eux, vacilla. La balle avait fait mouche. Une deuxième, une troisième…

À chaque tir, le ballon du démon vacillait et le gaz s’échappait en sifflant par les trous.

«Parfait ! Maintenant, nous allons le plaquer avec l’hélicoptère.»

Akechi plaça l’hélicoptère devant le démon et abaissa brusquement l’altitude.

Poussé ainsi, le démon bascula et se colla sous l’appareil.

«Bien ! Gardons-le ainsi et atterrissons quelque part dans un champ. Il ne pourra plus s’échapper.»

Ils braquèrent le projecteur vers le sol, trouvèrent un endroit approprié, et firent descendre l’hélicoptère dans un champ plongé dans l’obscurité.

Les trois sortirent de l’hélicoptère, éclairèrent sous l’appareil avec leurs lampes de poche, et trouvèrent accroché là le ballon du démon de vinyle, dégonflé,.

Ils le tirèrent dehors et, en fouillant la bouche, trouvèrent, bien attaché sur la langue, le scarabée rouge en rubis. Ils avaient enfin réussi à le récupérer.

Le lendemain, Kobayashi reçut un appel au bureau du détective Akechi. C’était le professeur Magicien.

«Vous avez gagné. Le rubis est à vous. Je suis désolé de vous avoir fait tant de misères, mais c’était pour tester votre intelligence et votre courage… Félicitations, club des jeunes détectives. Saluez bien l’inspecteur Akechi pour moi.»

Kobayashi, après avoir raccroché, échangea un sourire complice avec l’inspecteur Akechi, qui avait écouté la conversation à ses côtés.

***

底本:「新宝島」江戸川乱歩推理文庫、講談社

1988(昭和63)年11月8日第1版発行

初出:「たのしい三年生」講談社

1958(昭和33)年4月~1959(昭和34)年3月

入力:sogo

校正:岡村和彦

2016年6月10日作成

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